vol11 プロローグ最終話、そして出会う。
2006年9月2日 連載vo11の概要
夏。出入りしているプロ劇団の公演を控え、彼は忙しく立ち回る。しばらく直子と会うこともない日々が続く。そんな折、直子には新しい出会いが待っていた。そして・・・彼にも。
第十一話:プロローグ最終話 「そして出会う。」
夏はやはり暑い。その年も暑かったように思う。彼の出入りしていた劇団が夏の終わりに本番を控えていた。出入りし始めてすでに半年。彼の仕事も徐々に増えてきて、準備の段階では照明を手伝い、本番時はプロデューサーの片腕として、受付を取り仕切っていた。
忙しい日々が続くと、どうしても疎遠になる。彼と直子ともそうであった。彼の中では、一線を越えなかった日から、この恋は成就しないことを感じ取っていた。ただ、それは別れを意味するのではなく、男女の間における、友情の芽生えを意味するということも感じていた。
直子も彼とは別にこの夏は芝居に携わっていた。彼は準備、直子は練習と、ほとんど連絡もしない日々が続いた。
そして彼は仕込みの日を迎える。仕込とは、劇場にその芝居用のセッティングをすることだ。
彼は照明部隊として働いた。途中で受付も見ながら。
後日劇団関係者から聞いた話だが、彼の目はすでにハートマークだったそうだ・・・仕込みの日から。
そう、彼はまたしても違う女性に恋をする。
彼女は同じ年の照明をがんばってる学生だった。
仕込みの次の日、彼は直子さんと会う。直子から話は切り出した
「好きな人・・・好きになれそうな人ができた・・・」
「よかったじゃないですか!」
彼の反応は素直に良太郎の呪縛から解かれたことへの賛美だった。
「実は僕も気になる人が・・・」
「あ、そうなんだ」
お互い、つらい時期を一緒にすごしたような連帯感を感じつつ、少し甘いコーヒーがいつまでも減らなかった。妙な寂しさとそして新しい季節の風を感じながら、二人はそこで分かれた。これでよかった。本当にこれでよかった。今だから言える。そのときは少し言い聞かせてる彼がいた。
芝居の本番が終わり、打ち上げに参加した。本番中は今までにない忙しさで受付がてんてこ舞いとなり、彼は夢中だった。でも心の中に新しい女性の存在が大きくなっていることに気づかないわけでもなかった。
打ち上げは居酒屋。劇団関係者・スタッフ・お手伝い・そのほか・・・入り乱れての酒盛り。
そんな中で彼は目当ての女性に近づく。
「照明、やってるんだよね?面白い話があるんだけど」
文字にすると明らかに怪しい。が、実際はもっと普通だったと信じたい。実は演劇活動を通じて、照明の仕事の話をもらっていたのだが、料金も安くとてもプロは雇えない。ましてや彼は照明の知識があると言っても、その段階で「仕事」として請けれるほどの技術はなかった。
「お礼は少ないんだけど、興味があったら、ダンスの照明しない?」
こんな口実で彼女の名前と連絡先をゲットした。もちろん、ダンスの照明の話もウソじゃない。本当の話だ。
そして、彼は葉子と出会った。
次回:vol12 運命の遅刻
夏。出入りしているプロ劇団の公演を控え、彼は忙しく立ち回る。しばらく直子と会うこともない日々が続く。そんな折、直子には新しい出会いが待っていた。そして・・・彼にも。
第十一話:プロローグ最終話 「そして出会う。」
夏はやはり暑い。その年も暑かったように思う。彼の出入りしていた劇団が夏の終わりに本番を控えていた。出入りし始めてすでに半年。彼の仕事も徐々に増えてきて、準備の段階では照明を手伝い、本番時はプロデューサーの片腕として、受付を取り仕切っていた。
忙しい日々が続くと、どうしても疎遠になる。彼と直子ともそうであった。彼の中では、一線を越えなかった日から、この恋は成就しないことを感じ取っていた。ただ、それは別れを意味するのではなく、男女の間における、友情の芽生えを意味するということも感じていた。
直子も彼とは別にこの夏は芝居に携わっていた。彼は準備、直子は練習と、ほとんど連絡もしない日々が続いた。
そして彼は仕込みの日を迎える。仕込とは、劇場にその芝居用のセッティングをすることだ。
彼は照明部隊として働いた。途中で受付も見ながら。
後日劇団関係者から聞いた話だが、彼の目はすでにハートマークだったそうだ・・・仕込みの日から。
そう、彼はまたしても違う女性に恋をする。
彼女は同じ年の照明をがんばってる学生だった。
仕込みの次の日、彼は直子さんと会う。直子から話は切り出した
「好きな人・・・好きになれそうな人ができた・・・」
「よかったじゃないですか!」
彼の反応は素直に良太郎の呪縛から解かれたことへの賛美だった。
「実は僕も気になる人が・・・」
「あ、そうなんだ」
お互い、つらい時期を一緒にすごしたような連帯感を感じつつ、少し甘いコーヒーがいつまでも減らなかった。妙な寂しさとそして新しい季節の風を感じながら、二人はそこで分かれた。これでよかった。本当にこれでよかった。今だから言える。そのときは少し言い聞かせてる彼がいた。
芝居の本番が終わり、打ち上げに参加した。本番中は今までにない忙しさで受付がてんてこ舞いとなり、彼は夢中だった。でも心の中に新しい女性の存在が大きくなっていることに気づかないわけでもなかった。
打ち上げは居酒屋。劇団関係者・スタッフ・お手伝い・そのほか・・・入り乱れての酒盛り。
そんな中で彼は目当ての女性に近づく。
「照明、やってるんだよね?面白い話があるんだけど」
文字にすると明らかに怪しい。が、実際はもっと普通だったと信じたい。実は演劇活動を通じて、照明の仕事の話をもらっていたのだが、料金も安くとてもプロは雇えない。ましてや彼は照明の知識があると言っても、その段階で「仕事」として請けれるほどの技術はなかった。
「お礼は少ないんだけど、興味があったら、ダンスの照明しない?」
こんな口実で彼女の名前と連絡先をゲットした。もちろん、ダンスの照明の話もウソじゃない。本当の話だ。
そして、彼は葉子と出会った。
次回:vol12 運命の遅刻
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