vol9 大学3年生夏
2006年7月24日 連載vol9の概要
夏。恋の季節。彼は先輩の直子さんから相談を受けた。恋人の良太郎から別れを切り出されて、それを受け入れきれてない様子。相談を受けているうちに、彼はいつしか、直子さんに魅かれている自分に気付く。
第9話:手を握り締めていいですか
5月そのものの存在をなくす事で、美保への思いを忘れようとした彼。思いのほか忙しいことも手伝って、そんなには引きずることはなかった。それどころか、美保との出会いは彼を一つ成長させた。今まで、やはりどこかに、恋愛=純粋という幻想を抱いていた彼。泥をなめるかのような体験は彼の精神を一つ大きく、打たれ強くさせた。
そんな夏の初め、彼は先輩の直子さんから相談を受ける。直子さんは、彼が辞めた演劇部の先輩で、一緒に辞めた良太郎の彼女さんだ。
「良太郎にふられた。どうしていいか分からない」
かなり情緒不安定に見えた。彼には話を聞くこと、そして無難なアドバイスをすることぐらいしか出来なかった。決してキレイな恋愛とはいえないこの二人の恋を、涙とともに聞かされた彼。たいした助けにもなってあげれていないのに、それでも頼られていることにどこか嬉しさを感じていた。
「何とかしてよりを戻したい。彼なしでは・・・」
しかし、この二人の関係は残念ながらもう戻ることの出来ないところまでいっていたようだ。彼にとってはどちらも大切な人だし、今回の一件は、特にどちらかに非がある話でもなかったため、余計に苦しい思いをした。
そんな中で、彼の中である変化がおきます。
先輩という存在から、恋人を失った女性、そして人間的に尊敬できる存在、、、それが「恋愛感情」にかわるまでの時間はかなり短かったと言える。親友、良太郎の彼女(まぁ今は元彼女なわけですが)であり、先輩である直子さんへの感情をひたすらに隠し、相談を受け続ける彼。
『これは何かの間違いだ』と自分に言い聞かせ。
普通に食事にも行った。
ある晩、食事の後に街をぶらついた。なぜだろう。分からない。でも彼が口にしたのは、
「手を繋いでもいいですか?」
驚く直子さん。そりゃそうだ。
「いいよ・・・」
驚く彼。そりゃそうだ。
特に何があるわけじゃない。ただ手を繋いで街を練り歩く。くしくもそこは北の坂。彼は直子さんに、思いを告げた。でも何を求めるわけでもなく。彼女の心は良太郎の元にあった。それでも変わること無い手の温もり。
次回:vol10 本当に欲しかったもの。
夏。恋の季節。彼は先輩の直子さんから相談を受けた。恋人の良太郎から別れを切り出されて、それを受け入れきれてない様子。相談を受けているうちに、彼はいつしか、直子さんに魅かれている自分に気付く。
第9話:手を握り締めていいですか
5月そのものの存在をなくす事で、美保への思いを忘れようとした彼。思いのほか忙しいことも手伝って、そんなには引きずることはなかった。それどころか、美保との出会いは彼を一つ成長させた。今まで、やはりどこかに、恋愛=純粋という幻想を抱いていた彼。泥をなめるかのような体験は彼の精神を一つ大きく、打たれ強くさせた。
そんな夏の初め、彼は先輩の直子さんから相談を受ける。直子さんは、彼が辞めた演劇部の先輩で、一緒に辞めた良太郎の彼女さんだ。
「良太郎にふられた。どうしていいか分からない」
かなり情緒不安定に見えた。彼には話を聞くこと、そして無難なアドバイスをすることぐらいしか出来なかった。決してキレイな恋愛とはいえないこの二人の恋を、涙とともに聞かされた彼。たいした助けにもなってあげれていないのに、それでも頼られていることにどこか嬉しさを感じていた。
「何とかしてよりを戻したい。彼なしでは・・・」
しかし、この二人の関係は残念ながらもう戻ることの出来ないところまでいっていたようだ。彼にとってはどちらも大切な人だし、今回の一件は、特にどちらかに非がある話でもなかったため、余計に苦しい思いをした。
そんな中で、彼の中である変化がおきます。
先輩という存在から、恋人を失った女性、そして人間的に尊敬できる存在、、、それが「恋愛感情」にかわるまでの時間はかなり短かったと言える。親友、良太郎の彼女(まぁ今は元彼女なわけですが)であり、先輩である直子さんへの感情をひたすらに隠し、相談を受け続ける彼。
『これは何かの間違いだ』と自分に言い聞かせ。
普通に食事にも行った。
ある晩、食事の後に街をぶらついた。なぜだろう。分からない。でも彼が口にしたのは、
「手を繋いでもいいですか?」
驚く直子さん。そりゃそうだ。
「いいよ・・・」
驚く彼。そりゃそうだ。
特に何があるわけじゃない。ただ手を繋いで街を練り歩く。くしくもそこは北の坂。彼は直子さんに、思いを告げた。でも何を求めるわけでもなく。彼女の心は良太郎の元にあった。それでも変わること無い手の温もり。
次回:vol10 本当に欲しかったもの。
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