vol5の概要:
 美穂への思いは消えない。歩と何度か体を重ねた末、彼は美穂への思いを断ち切り、きちんと歩と向かい合う決心をした。しかしその決心は少し遅かったのかも知れない。歩とも別れが待っていた。

第五話:疑いの先に無くしたもの。

 歩とはデートを何度か繰り返した。歩は彼の声が特に好きだと言った。彼は歩の体に没頭していた。人生で初めて経験する快楽を年下の歩から教わることと、美穂への思いが消えていないことに悩まされながら。二人の関係は誰にばれることもなく、また二人が会う頻度は決して多いわけではなった。
 大学2年生になり、彼にも後輩ができた。その後輩の中に、彼の好みの女性がいた。何が面白いって、美穂を奪い合った高太郎もその女性、泉、にホの字だというこだろう。
 学生生活のほとんどが、彼にとっては演劇部の活動であった。このころから、授業にまともに出なくなり、一日、芝居の稽古をしたり、部室でだらけてたりするようになった。
 芝居を一生懸命やるのは、後輩の泉の気を引くためになってきていた。美穂のことは忘れたわけではないが、糸を引くことも少なくなった。それでも歩とはたまに会っていた分けだが・・・。
 彼の中で一つの変化が生まれ始めていた。不純な、女の子の気を引くために頑張っていた芝居だったが、だんだんと、芝居そのものに魅せられてきていた。それにつれて、余計に授業にはでなくなっていた。歩と会う回数も減っていた。
 そしてまた夏が来る。その頃はもう芝居に熱中するようになり、それに伴って美穂への思いも薄らいでいた。泉のことは気に入ってはいたが、どうこうしたいという分けではなかった。彼は恒例の演劇部合宿で一人考え、歩ときちんと向き合う気持ちを固めた。
 合宿が終わった後は新人公演が待っている。彼は去年は出演、今年は裏方。めまぐるしい日々が続いた。
 それとほぼ同時に、歩も一つの芝居に参加した。それは本来、高校生の歩が参加できるものではなかったのだが、紹介とつてで特別に参加していた。彼らが稽古をするすぐ近くで、歩たちも稽古をしていた。歩たちのグループの半数は彼の先輩や知り合いだった。しかし、彼は稽古の時は歩と接触を持とうとはしなかった。
 彼の方の新人公演が一足早く終わり、彼は歩にきちんと付き合う、そういう話をする決心をしていた。そんな夏の終わり、彼は良からぬ噂を耳にする。歩が彼の演劇部同期の男の部屋で生活しているというものだった。歩が参加しているグループの関係者であり、稽古場から近いから・・・と納得できるはずも無い。さらのもっと良からぬ噂では、歩はそっちの団体の代表者に肉体的に言い寄ったらしい・・・彼の中で何かが崩れ落ちていった。真相を問いただすことも出来ないまま、運命は残酷に二人を分かつ。歩は公演が終わってまもなく、東京へ行ってしまった。別れをちゃんと言えないまま、しばらくは連絡も取り合っていたのだが、いつしか歩の電話は繋がらなくなった。それでも、今なお、彼の携帯には繋がらなくなった歩の電話番号が残っている。真実を聞けなかった自らの愚かさを風化させないために。

次回:vol6 大学2年生冬



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 ありがたいことです。こんな日記に足を運んで下さって。
 最近秘密日記はあまり書いてませんが、今後は書きます。
 もしそちらもご覧になりたい方は、リンク&コメント頂ければ、
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 秘密は見たいけど、ご自身の日記は読まれたくない・・・
 って場合はおっしゃっていただけたら読みません(笑

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