vol4 大学1年生冬〜大学2年生春
2006年7月1日 連載 コメント (1)vol4の概要:
別れは新しい出会いを導く。彼は美穂の後輩、歩(あゆみ)と知り合う。美穂への思いをどこかに残したまま、彼は歩と初めての夜を迎える・・・
第4話:雨降る街角
集大成と言える公演は無事終演を迎えた。その芝居を観に来ていた美穂の後輩、歩から彼はメールの交換を申し出られた。歩は彼が観に行った美穂の学園祭での芝居で主役を張っていた子だった。歩は彼の声が素敵だといい、鈍感な彼でも分かるほどのアプローチをかけてきた。
「オレは君の先輩の美穂のことが今でも好きなんだよ」
「それでもかまいません!」
若さゆえか、その情熱ゆえか、歩が引くことは無かった。メールを交わし、電話で話し、食事に行くほどの仲になった。歩は正直可愛い存在であった。しかし、彼の心の中には美穂への思いがまだ確実に存在していた。
一方で彼はあることに焦りを感じていた。20代を目前として(彼は4月生まれなので)未だに経験が無いことに。それは決して恥ずべきことでもなければ、焦ることでもないのだが、彼にも犬に食わせてしまえばいいようなプライドに似た「見栄」があった。
美穂への思いを残し、何度目かの歩とのデート、その日は雨が降っていた。街中を特に当ても無くぶらつく二人。そして目に入ったのがビルの中にある観覧車。二人っきりの時間が始まる。
『キスがしたい・・・』
彼の中に生まれた欲望。目の前の女の子は自分に好意を持っている分けだから、彼の持って行き方でそれもまた可能であっただろう。しかしそれでも彼は美穂という存在と目の前の歩との間で何か分からない苦しさを覚えていた。
何事も無く、観覧車を降り、雨の街をぶらつく二人。彼の中では欲望と止める事の出来ない思いとが入り混じっていたのは確かだ。
足を止める二人。もう何も聞こえない。ドラマであれば、ここで主題歌がカットインしているのだろう。歩を抱き寄せる彼、重なる唇、地面に落ちる傘、肩を打つ雨、二人を包む灰色の街。
そして、どこかに美穂への思いを抱いたまま、彼はその日、初めての夜を向かえた。
次回:vol5 大学2年生春〜夏そして秋
別れは新しい出会いを導く。彼は美穂の後輩、歩(あゆみ)と知り合う。美穂への思いをどこかに残したまま、彼は歩と初めての夜を迎える・・・
第4話:雨降る街角
集大成と言える公演は無事終演を迎えた。その芝居を観に来ていた美穂の後輩、歩から彼はメールの交換を申し出られた。歩は彼が観に行った美穂の学園祭での芝居で主役を張っていた子だった。歩は彼の声が素敵だといい、鈍感な彼でも分かるほどのアプローチをかけてきた。
「オレは君の先輩の美穂のことが今でも好きなんだよ」
「それでもかまいません!」
若さゆえか、その情熱ゆえか、歩が引くことは無かった。メールを交わし、電話で話し、食事に行くほどの仲になった。歩は正直可愛い存在であった。しかし、彼の心の中には美穂への思いがまだ確実に存在していた。
一方で彼はあることに焦りを感じていた。20代を目前として(彼は4月生まれなので)未だに経験が無いことに。それは決して恥ずべきことでもなければ、焦ることでもないのだが、彼にも犬に食わせてしまえばいいようなプライドに似た「見栄」があった。
美穂への思いを残し、何度目かの歩とのデート、その日は雨が降っていた。街中を特に当ても無くぶらつく二人。そして目に入ったのがビルの中にある観覧車。二人っきりの時間が始まる。
『キスがしたい・・・』
彼の中に生まれた欲望。目の前の女の子は自分に好意を持っている分けだから、彼の持って行き方でそれもまた可能であっただろう。しかしそれでも彼は美穂という存在と目の前の歩との間で何か分からない苦しさを覚えていた。
何事も無く、観覧車を降り、雨の街をぶらつく二人。彼の中では欲望と止める事の出来ない思いとが入り混じっていたのは確かだ。
足を止める二人。もう何も聞こえない。ドラマであれば、ここで主題歌がカットインしているのだろう。歩を抱き寄せる彼、重なる唇、地面に落ちる傘、肩を打つ雨、二人を包む灰色の街。
そして、どこかに美穂への思いを抱いたまま、彼はその日、初めての夜を向かえた。
次回:vol5 大学2年生春〜夏そして秋
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