vol2の概要:
 彼は頑張った。演劇部、バイト、そして恋愛・・・美穂と付き合うことになる。

第二話:満天の星と波の音。

 季節は夏。この年の夏は、彼にとって、その暑さ以上に熱い夏となる。
 美穂に思いを寄せるうちに、彼はあることに気付くのだった。演劇部同期の高太郎が、やはり同じく美穂に思いを寄せていることに。部活内の三角関係など、別に珍しいことでも無かったが、彼らの場合はある1点において妙であった。全員うぶだったのだ。いや、笑うこと無かれ。彼らはそれほど純粋に、そして無垢だったわけで・・・。
 その頃の彼は、部活動を頑張るのは、そのほとんどが美穂にいいところを見せたい一心であったと言える。
 そんなある日、彼と高太郎に美穂が声をかけた・・・
「芝居のチケットが1枚あまったんだけど、どっちか買わない?」
 女の子4人で観に行く芝居のチケットが、一人行けなくなったため1枚余ったのだ。彼も高太郎も行きたい。行きたくてしょうがない。
「行く!」
 最初に返事をしたのが彼だった。お金やスケジュールは後で考えたらいい。高太郎はそこを一瞬迷ってしまったのだ。しかし、これがある意味において、彼の人生を大きくかえることとなる。
 芝居当日、席が2:2で分かれていることを知り、彼は裏から手を回す。今から思えば、なりふり構わず、といった感じであろうか。そしてまんまと美穂の隣に陣取った彼は、
『あ〜今からしばらく、こんな近距離に・・・芝居に集中できね〜』
と思うわけだが、その彼の思いは、芝居が始まる前に早くも消え去る。
 キャラメルボックスには有名な加藤さんの前座があった。それを見たとき、彼は既に意識が舞台上にあった。カーテンコールの拍手が鳴り止むまで、彼は隣に美穂がいたことを忘れた。グッドバイノーチラス。この作品が彼の運命を変えた。
【いつか同じ舞台(世界)で活躍したい】
 それからの彼は、純粋に演劇にも熱中した。微妙に不純だった彼の熱意が、本当の意味で純粋になった。
 夏といえば、合宿。この演劇部にも強化合宿というなのお遊び合宿があった。浜辺。演劇部らしく、余興は即興芝居やネタ大会。花火に肝試し。夏だ。これこそ夏だ。
 そんな中、彼は美穂を呼び出す。その頃はまだ「あいのり」などという番組は無かったが、どう考えてもそういうノリだ。浜辺で話をする二人。その遠く後に高太郎がいた。二人のことが気になって散歩にかこつけて探しに来てたのだ。何を話したのだろうか・・・彼が覚えているのは、満天だった星空と、静かに力強く押し寄せる波の音だけだった。でも確かに彼は告白した。もう既にばれまくりの彼の美穂に対する思いを。なんという返事をもらったかも覚えていない。返事は保留だったと思う。ただ、昼間の暑さとはうってかわって、涼しい夏の夜だった。
 合宿から帰り、しばらくして、美穂の親友から、
「美穂の答え、多分○だよ」
と教えてもらう。
 彼の短い春が始まった。

次回:vol3 大学1年生 秋〜冬

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