vol1概要:
 彼は無事大学生となり、高校時代にずっと片思いをしていた女性への
 淡い恋心に見切りをつけ、新しい恋を見つけたのである。


第一話:その思い、胸に秘め。

 彼は第一希望とはいかなかったが、無事に国立大学に合格することが出来た。浪人をして第一希望を目指すことも選択肢の一つであったろうが、それを選ばなかったのには理由があった。彼が高校時代にずっと恋焦がれていた女性が(その女性は彼の大学の隣の県に住んでいたのだが)あと1年で実家に帰ってしまうことを知っていたからだ。え?それだけの理由で?と驚かれる人もいるだろう。でも彼にとって、どの大学に行くかと言うことよりも、その1年で彼女を振り向かせたいと思う気持ちの方が強かったのである。
 彼の大学生活は至ってマジメにスタートを切ることとなる。部活は以前から興味があった演劇部を選択した。ここでいきなりではあるが、彼の変人っぷりが発揮される。新入生にもかかわらず、彼が演劇部に入部を決めて、初めに取った行動は、「新入生の勧誘」であった。自ら進んで。理由は単純明快。同じやるなら仲間が多い方がいいと思ったからである。
 演劇部、新しい学生生活、バイト・・・彼を取り巻く環境は激しく変化し、しばらく片思いの女性にも会えない日が続いた。演劇部の練習は、特に本番直前は朝から夜中まで続くハードなものであった。もちろん、それに伴い、仲間同士の絆はかなり深まるし、またそこから恋愛などに発展するのも決しておかしな話ではなかった。彼もご多分に漏れず、同期の仲間にほのかに魅かれ始めていた。
 そんな忙しい生活の中で、恋焦がれていた女性に会う機会が巡ってくる。
 久しぶりに会うその女性(むつみ)、相変わらず無駄にてれる彼。夜中に満点の星を見ながら語り合う男女!なんとロマンチックな・・・
 彼はここで彼女、むつみへの思いを断ち切ることを決める。むつみは、仕事・夜間学校・陸上競技の3つを同時に頑張っている彼にとって眩しい存在であった。しかし、彼の思いはむつみに届くことはなかった。そればかりか、忙しい仕事のストレスの中、陸上競技にとってはマイナスにしか働かないタバコをいつの間にか吸っていた彼女に、彼は以前のように眩しさを感じなかった。帰りの電車の中で、一つの青春が終わったことに涙した。
 さて話は演劇部に戻る。既に新しい恋心が芽生え始めているわけだが、そんなことはお構い無しに、忙しい日々が続く。しかし彼にとっては、最も無心に頑張れて、充実した日々を送れた時期であった。そしてそんな忙しさの中でも、彼の同期、美穂への思いは着実に募っていくのである。



次回:「vol2 大学1年生 夏」

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綾心
綾心
2006年6月20日21:44

めっさたのしみ

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