掲載打ち切りのお詫び
2007年10月23日コメント (1)久しく更新ってよりも存在を・・・あうあう。
ここを更新することは今後ありません。
多分。
リンクはどうぞ削除して下さい。
MIXIをしております。
「こも」「男性」「28歳」「AB型」
で検索したら出てくるやつの一人です。
どうぞ見つけてやってください。
お話が途中になってすいません。
踏ん切りがつかずに過去の恋愛をつらつらと書いただけの
くだらない文章でした。
ここを更新することは今後ありません。
多分。
リンクはどうぞ削除して下さい。
MIXIをしております。
「こも」「男性」「28歳」「AB型」
で検索したら出てくるやつの一人です。
どうぞ見つけてやってください。
お話が途中になってすいません。
踏ん切りがつかずに過去の恋愛をつらつらと書いただけの
くだらない文章でした。
ティータイム
2007年2月11日コーヒーブレイクの次はティータイムかと。
今日、こんなメールのやり取りを今の彼女とした。
彼女
「ツラいのは私だけじゃないのに、いつも私ばかり不安を口にしてごめんなさい。出口のない迷路に入り込んでしまったようで、思い切って降参してしまった方が、この迷路から抜け出した方がいいのでは?と毎日考えては、つい涙が出てしまいます。好きになればなるほど、一緒にいる時間が長ければ長いほど辛いのです。仕事であれやこれや辛い時だからこそ、そばにいて、少しでも力になりたいと思うのに、常に情緒不安定で関係を持つ度に罪悪感すら感じてしまう自分がいます。これが私の今の気持ちだし、今日話したことも全て本音です。今のこの時を楽しもうと思っても、それは一瞬で次の瞬間には不安の嵐です。彼氏にこんな辛い思いをさせる彼女では決してありたくないのです。涙ばかり流すような彼女ではいやなのです。重荷にもなりたくない。でも、私にはもう無理かも。お互い、ゴールは違う場所にあるのかもしれない。一度、今の関係から距離をおくことを考えてもいいですか?今は辛いかもしれないけれど、長期的に考えたら、こもも私のこととは無関係に、自分の道を真っ直ぐに進めると思うのです。どちらに進むとしても。もし別れたとして、私がその後結婚相手を見つけるかどうか、そんなことは重要じゃなくて。とにかくこものプレッシャーにならずに、辛い思いをさせずに、素直に影から応援したいと思うのです。私にもそんな一人でいる時間が必要な気がします。そして、万が一別の世界に、踏み出す時には誰にも気負いせずに行きたいのです。
こもが悪いんじゃない、全て私のわがままなのです。また会った時にゆっくり話させて下さい。」
こも
「分かった。
お前が、どんな悲痛な気持ちでこの文章を書いていたのかと、想像すると涙がこぼれれます。
ボクがボクであるから今君と付き合い、そしてボクであったから、分かれる・・・
この1週間の間に、上司とは話をする場を設けます。その結果どうなるかはまだ分かりませんが。
これはもちろん、お前がいたから、という要素もあります。でも、逆にお前がいなかったら、もっと泥沼にはまり、それこそ、自分の命を天秤にかけていたかも知れません。
お金。こればっかりは急に増えるものではありません。そして今私はお金を持っていない、それも事実です。莫大な借金を背負うことになるのか、それともただの文無しになるのか・・・どちらにしてもお前には不安が残るでしょうね。
ただ、別れるつもりはない。距離を置くのには賛成しよう。
君が君のわがままで距離を置くことを提案したのだから、これくらい私のわがままを聞いてくれ。
仕事に関して上司と話し合いをするのは、私のわがままだ。信頼関係を築けなかった私の不徳だ。
まぁ後は後日にしようか。
君といると幸せが倍になる。でも今は辛さも倍になってるようだね。
距離を置き、私の進路が決まり、お前の気持ちが整理され、、、そして幸せは倍に、辛さは半分に思えるようになったら、、、その時は結婚しよう。」
彼女
「自分の部屋でメールを何度も読みました。涙が溢れて止まりませんでした。
貴方は私にとって、とても大切な、かけがえのない人です。それは今後も変わることはありません。私をこんなに理解してくれる人にはもう会えないかもしれません。こもがいたからこそ、色々な世界を知ることが出来たし、毎日が幸せだったんだよ。本当に心から愛してた。
わがままを聞いてくれて有難う。少し気持ちを落ち着けて、整理してみます。
上司さんと、納得のゆくまで、じっくりと話が出来ることを祈っています。距離はおいても、いつでもこものことを応援しています。
辛さが半分になって、
幸せが倍になったら
結婚してください。」
人生色々ですが、私は元気です。
今日、こんなメールのやり取りを今の彼女とした。
彼女
「ツラいのは私だけじゃないのに、いつも私ばかり不安を口にしてごめんなさい。出口のない迷路に入り込んでしまったようで、思い切って降参してしまった方が、この迷路から抜け出した方がいいのでは?と毎日考えては、つい涙が出てしまいます。好きになればなるほど、一緒にいる時間が長ければ長いほど辛いのです。仕事であれやこれや辛い時だからこそ、そばにいて、少しでも力になりたいと思うのに、常に情緒不安定で関係を持つ度に罪悪感すら感じてしまう自分がいます。これが私の今の気持ちだし、今日話したことも全て本音です。今のこの時を楽しもうと思っても、それは一瞬で次の瞬間には不安の嵐です。彼氏にこんな辛い思いをさせる彼女では決してありたくないのです。涙ばかり流すような彼女ではいやなのです。重荷にもなりたくない。でも、私にはもう無理かも。お互い、ゴールは違う場所にあるのかもしれない。一度、今の関係から距離をおくことを考えてもいいですか?今は辛いかもしれないけれど、長期的に考えたら、こもも私のこととは無関係に、自分の道を真っ直ぐに進めると思うのです。どちらに進むとしても。もし別れたとして、私がその後結婚相手を見つけるかどうか、そんなことは重要じゃなくて。とにかくこものプレッシャーにならずに、辛い思いをさせずに、素直に影から応援したいと思うのです。私にもそんな一人でいる時間が必要な気がします。そして、万が一別の世界に、踏み出す時には誰にも気負いせずに行きたいのです。
こもが悪いんじゃない、全て私のわがままなのです。また会った時にゆっくり話させて下さい。」
こも
「分かった。
お前が、どんな悲痛な気持ちでこの文章を書いていたのかと、想像すると涙がこぼれれます。
ボクがボクであるから今君と付き合い、そしてボクであったから、分かれる・・・
この1週間の間に、上司とは話をする場を設けます。その結果どうなるかはまだ分かりませんが。
これはもちろん、お前がいたから、という要素もあります。でも、逆にお前がいなかったら、もっと泥沼にはまり、それこそ、自分の命を天秤にかけていたかも知れません。
お金。こればっかりは急に増えるものではありません。そして今私はお金を持っていない、それも事実です。莫大な借金を背負うことになるのか、それともただの文無しになるのか・・・どちらにしてもお前には不安が残るでしょうね。
ただ、別れるつもりはない。距離を置くのには賛成しよう。
君が君のわがままで距離を置くことを提案したのだから、これくらい私のわがままを聞いてくれ。
仕事に関して上司と話し合いをするのは、私のわがままだ。信頼関係を築けなかった私の不徳だ。
まぁ後は後日にしようか。
君といると幸せが倍になる。でも今は辛さも倍になってるようだね。
距離を置き、私の進路が決まり、お前の気持ちが整理され、、、そして幸せは倍に、辛さは半分に思えるようになったら、、、その時は結婚しよう。」
彼女
「自分の部屋でメールを何度も読みました。涙が溢れて止まりませんでした。
貴方は私にとって、とても大切な、かけがえのない人です。それは今後も変わることはありません。私をこんなに理解してくれる人にはもう会えないかもしれません。こもがいたからこそ、色々な世界を知ることが出来たし、毎日が幸せだったんだよ。本当に心から愛してた。
わがままを聞いてくれて有難う。少し気持ちを落ち着けて、整理してみます。
上司さんと、納得のゆくまで、じっくりと話が出来ることを祈っています。距離はおいても、いつでもこものことを応援しています。
辛さが半分になって、
幸せが倍になったら
結婚してください。」
人生色々ですが、私は元気です。
電話を切られて凹む彼。
そして程なくメールが1通。
「お願い、メールにして」
戸惑いながらも、何と返していいのか分からず一言
「どうして」
「実家にいるから」
「直接言いたいことがある」
しばらく、その間は本当は一瞬だったのかもしれない。
それでもずいぶん長い間が空いたように感じた。
「私も同じだから」
その言葉が意味することを彼は初め分からずにいた。
そしてやっと分かったとき、喜びが彼を包んだ。
「付き合って欲しい」
「はい」
そのメールはしばらく、、、正確に言うと、彼が携帯を交換するその日まで、彼の携帯の中に保存されるのだった。
そして程なくメールが1通。
「お願い、メールにして」
戸惑いながらも、何と返していいのか分からず一言
「どうして」
「実家にいるから」
「直接言いたいことがある」
しばらく、その間は本当は一瞬だったのかもしれない。
それでもずいぶん長い間が空いたように感じた。
「私も同じだから」
その言葉が意味することを彼は初め分からずにいた。
そしてやっと分かったとき、喜びが彼を包んだ。
「付き合って欲しい」
「はい」
そのメールはしばらく、、、正確に言うと、彼が携帯を交換するその日まで、彼の携帯の中に保存されるのだった。
本章2 「手をつないでもいいですか?」
2006年10月28日概要
デートに誘った彼。歩く、しゃべる、ただそれだけ。そんな中彼の口から出た一言「手を、つないでもいいですか?」どこのカップルがこんな許可を取って手をつなぐというのだろうか。バカ。そして夜、電話をするも、拒否られる彼・・・。
本章2:「手をつないでもいいですか?」
海の見える港。って港は海が見えて当たり前ですな。何を話したか覚えてない。それだけ彼は舞い上がっていた、緊張していたと言える。
でも不思議と、その日見た光景は今でも忘れない。断片的になってはいるが。
どれだけ歩けば気が済むんだろうか。というくらい歩いただろうか。
「手を、つないでもいいですか?」
不意に彼の口をついた言葉は、一言一句まごうことなく、こんなセリフだった。
「え?」
びっくりするのも当然だ。それでも恥ずかしそうに、いいよ、と答える葉子。
彼の思いは加速する。
本来は実家からの帰りの日に会う予定だったのだが、少し予定が変更されて、その日、葉子は実家に戻っていった。
もうとまらない。
もうとめられない。
彼の葉子への思い。
そして夜、彼は葉子にメールをするが、どうしても我慢できなくなって電話をする。
「・・・」
電話を切られた。
次回:本章3 同じ
デートに誘った彼。歩く、しゃべる、ただそれだけ。そんな中彼の口から出た一言「手を、つないでもいいですか?」どこのカップルがこんな許可を取って手をつなぐというのだろうか。バカ。そして夜、電話をするも、拒否られる彼・・・。
本章2:「手をつないでもいいですか?」
海の見える港。って港は海が見えて当たり前ですな。何を話したか覚えてない。それだけ彼は舞い上がっていた、緊張していたと言える。
でも不思議と、その日見た光景は今でも忘れない。断片的になってはいるが。
どれだけ歩けば気が済むんだろうか。というくらい歩いただろうか。
「手を、つないでもいいですか?」
不意に彼の口をついた言葉は、一言一句まごうことなく、こんなセリフだった。
「え?」
びっくりするのも当然だ。それでも恥ずかしそうに、いいよ、と答える葉子。
彼の思いは加速する。
本来は実家からの帰りの日に会う予定だったのだが、少し予定が変更されて、その日、葉子は実家に戻っていった。
もうとまらない。
もうとめられない。
彼の葉子への思い。
そして夜、彼は葉子にメールをするが、どうしても我慢できなくなって電話をする。
「・・・」
電話を切られた。
次回:本章3 同じ
概要
打ち合わせと称して葉子と会う。しかし彼にしては本当に珍しく大遅刻。それが彼の運命を変えることになるとも知らずに。
本章1:運命の遅刻
ダンスの照明の仕事をお願いした彼は、簡単な打ち合わせと称して葉子を呼び出した。ちょうど実家に帰る予定だった葉子と駅で待ち合わせをした。
前の晩、決して夜更かしをしたわけではない。それでも、彼にしては珍しく、寝坊をしてしまう。葉子からの電話で起きた彼は、電話口で直謝り。急いで身支度をして電車に飛び乗る。最悪だ。実質初対面に近いわけで、寝坊など・・・彼のプライドもそれを許すわけは無かった。
それでも笑顔で迎えてくれた葉子に、彼は昼食をおごることを提案した。駅の中にあるちっぽけな喫茶店。そこの簡単なサンドイッチがその日の昼ご飯になった。
仕事の話は思った以上にすんなり受けてもらえて一安心した彼。その後何をしゃべったかは定かではない。前回葉子にあってから、メールは何度か交わしていたが、会うのは実質2度目だった。
その夜、実家にいる彼女に、彼は少しばかりの勇気を振り絞ってメールを書いた。
「実家から戻る時、どっかで会いませんか」
もう少し色気のあるメールだったとは思うが、要はデートのお誘い。
「いいよ」
彼は次の日も寝坊することになる。
次回:本章2 「手をつないでもいいですか?」
打ち合わせと称して葉子と会う。しかし彼にしては本当に珍しく大遅刻。それが彼の運命を変えることになるとも知らずに。
本章1:運命の遅刻
ダンスの照明の仕事をお願いした彼は、簡単な打ち合わせと称して葉子を呼び出した。ちょうど実家に帰る予定だった葉子と駅で待ち合わせをした。
前の晩、決して夜更かしをしたわけではない。それでも、彼にしては珍しく、寝坊をしてしまう。葉子からの電話で起きた彼は、電話口で直謝り。急いで身支度をして電車に飛び乗る。最悪だ。実質初対面に近いわけで、寝坊など・・・彼のプライドもそれを許すわけは無かった。
それでも笑顔で迎えてくれた葉子に、彼は昼食をおごることを提案した。駅の中にあるちっぽけな喫茶店。そこの簡単なサンドイッチがその日の昼ご飯になった。
仕事の話は思った以上にすんなり受けてもらえて一安心した彼。その後何をしゃべったかは定かではない。前回葉子にあってから、メールは何度か交わしていたが、会うのは実質2度目だった。
その夜、実家にいる彼女に、彼は少しばかりの勇気を振り絞ってメールを書いた。
「実家から戻る時、どっかで会いませんか」
もう少し色気のあるメールだったとは思うが、要はデートのお誘い。
「いいよ」
彼は次の日も寝坊することになる。
次回:本章2 「手をつないでもいいですか?」
vol11 プロローグ最終話、そして出会う。
2006年9月2日 連載vo11の概要
夏。出入りしているプロ劇団の公演を控え、彼は忙しく立ち回る。しばらく直子と会うこともない日々が続く。そんな折、直子には新しい出会いが待っていた。そして・・・彼にも。
第十一話:プロローグ最終話 「そして出会う。」
夏はやはり暑い。その年も暑かったように思う。彼の出入りしていた劇団が夏の終わりに本番を控えていた。出入りし始めてすでに半年。彼の仕事も徐々に増えてきて、準備の段階では照明を手伝い、本番時はプロデューサーの片腕として、受付を取り仕切っていた。
忙しい日々が続くと、どうしても疎遠になる。彼と直子ともそうであった。彼の中では、一線を越えなかった日から、この恋は成就しないことを感じ取っていた。ただ、それは別れを意味するのではなく、男女の間における、友情の芽生えを意味するということも感じていた。
直子も彼とは別にこの夏は芝居に携わっていた。彼は準備、直子は練習と、ほとんど連絡もしない日々が続いた。
そして彼は仕込みの日を迎える。仕込とは、劇場にその芝居用のセッティングをすることだ。
彼は照明部隊として働いた。途中で受付も見ながら。
後日劇団関係者から聞いた話だが、彼の目はすでにハートマークだったそうだ・・・仕込みの日から。
そう、彼はまたしても違う女性に恋をする。
彼女は同じ年の照明をがんばってる学生だった。
仕込みの次の日、彼は直子さんと会う。直子から話は切り出した
「好きな人・・・好きになれそうな人ができた・・・」
「よかったじゃないですか!」
彼の反応は素直に良太郎の呪縛から解かれたことへの賛美だった。
「実は僕も気になる人が・・・」
「あ、そうなんだ」
お互い、つらい時期を一緒にすごしたような連帯感を感じつつ、少し甘いコーヒーがいつまでも減らなかった。妙な寂しさとそして新しい季節の風を感じながら、二人はそこで分かれた。これでよかった。本当にこれでよかった。今だから言える。そのときは少し言い聞かせてる彼がいた。
芝居の本番が終わり、打ち上げに参加した。本番中は今までにない忙しさで受付がてんてこ舞いとなり、彼は夢中だった。でも心の中に新しい女性の存在が大きくなっていることに気づかないわけでもなかった。
打ち上げは居酒屋。劇団関係者・スタッフ・お手伝い・そのほか・・・入り乱れての酒盛り。
そんな中で彼は目当ての女性に近づく。
「照明、やってるんだよね?面白い話があるんだけど」
文字にすると明らかに怪しい。が、実際はもっと普通だったと信じたい。実は演劇活動を通じて、照明の仕事の話をもらっていたのだが、料金も安くとてもプロは雇えない。ましてや彼は照明の知識があると言っても、その段階で「仕事」として請けれるほどの技術はなかった。
「お礼は少ないんだけど、興味があったら、ダンスの照明しない?」
こんな口実で彼女の名前と連絡先をゲットした。もちろん、ダンスの照明の話もウソじゃない。本当の話だ。
そして、彼は葉子と出会った。
次回:vol12 運命の遅刻
夏。出入りしているプロ劇団の公演を控え、彼は忙しく立ち回る。しばらく直子と会うこともない日々が続く。そんな折、直子には新しい出会いが待っていた。そして・・・彼にも。
第十一話:プロローグ最終話 「そして出会う。」
夏はやはり暑い。その年も暑かったように思う。彼の出入りしていた劇団が夏の終わりに本番を控えていた。出入りし始めてすでに半年。彼の仕事も徐々に増えてきて、準備の段階では照明を手伝い、本番時はプロデューサーの片腕として、受付を取り仕切っていた。
忙しい日々が続くと、どうしても疎遠になる。彼と直子ともそうであった。彼の中では、一線を越えなかった日から、この恋は成就しないことを感じ取っていた。ただ、それは別れを意味するのではなく、男女の間における、友情の芽生えを意味するということも感じていた。
直子も彼とは別にこの夏は芝居に携わっていた。彼は準備、直子は練習と、ほとんど連絡もしない日々が続いた。
そして彼は仕込みの日を迎える。仕込とは、劇場にその芝居用のセッティングをすることだ。
彼は照明部隊として働いた。途中で受付も見ながら。
後日劇団関係者から聞いた話だが、彼の目はすでにハートマークだったそうだ・・・仕込みの日から。
そう、彼はまたしても違う女性に恋をする。
彼女は同じ年の照明をがんばってる学生だった。
仕込みの次の日、彼は直子さんと会う。直子から話は切り出した
「好きな人・・・好きになれそうな人ができた・・・」
「よかったじゃないですか!」
彼の反応は素直に良太郎の呪縛から解かれたことへの賛美だった。
「実は僕も気になる人が・・・」
「あ、そうなんだ」
お互い、つらい時期を一緒にすごしたような連帯感を感じつつ、少し甘いコーヒーがいつまでも減らなかった。妙な寂しさとそして新しい季節の風を感じながら、二人はそこで分かれた。これでよかった。本当にこれでよかった。今だから言える。そのときは少し言い聞かせてる彼がいた。
芝居の本番が終わり、打ち上げに参加した。本番中は今までにない忙しさで受付がてんてこ舞いとなり、彼は夢中だった。でも心の中に新しい女性の存在が大きくなっていることに気づかないわけでもなかった。
打ち上げは居酒屋。劇団関係者・スタッフ・お手伝い・そのほか・・・入り乱れての酒盛り。
そんな中で彼は目当ての女性に近づく。
「照明、やってるんだよね?面白い話があるんだけど」
文字にすると明らかに怪しい。が、実際はもっと普通だったと信じたい。実は演劇活動を通じて、照明の仕事の話をもらっていたのだが、料金も安くとてもプロは雇えない。ましてや彼は照明の知識があると言っても、その段階で「仕事」として請けれるほどの技術はなかった。
「お礼は少ないんだけど、興味があったら、ダンスの照明しない?」
こんな口実で彼女の名前と連絡先をゲットした。もちろん、ダンスの照明の話もウソじゃない。本当の話だ。
そして、彼は葉子と出会った。
次回:vol12 運命の遅刻
vol10 本当に欲しかったもの。
2006年7月28日 連載vol10の概要
手を繋いだ夜から二人は以前にもまして食事に行ったり、しゃべったりする時間は増えた。微妙な距離感を残して。そんなある日、直子は彼の家に行く。一線を越える刹那、「まだ良太郎のことが好きだよ・・・私は。それでもいい?」その言葉に、彼は本当に欲しかったのは直子の体ではなく心だと気付き、その手を止めた。
第十話:本当に欲しかったもの。
食事に行くことも増えた。しゃべる時間も増えた。ある時は泥酔した彼が酔って直子さんに電話をして、そのまま寝てしまったこともあった。
彼は特に何かを求めたわけではなかった。
ある夜、その日は特に月がきれいだった。満月。彼は直子さんを呼び出した。月夜の散歩。彼は彼女を見つめ、彼女は月に違う男を見ていた。それでも良かった。その距離感が丁度いいのだと思っていた。
そんなとき、直子さんが彼の家に遊びに来た。名目は将棋を教えると言うことだった。彼は実家暮らし。母親や妹の目を避けつつ、部屋に招きいれた。もちろんばれていたわけだが。将棋のルールをひとしきり教え終わると、そこには妙な空気が流れていた。他の部屋には家族がいるというのに。彼は直子さんを押し倒していた。抱きしめたくてしょうがなかった。彼女も半分はそのつもりであったのだろう。特に抵抗することも無かった。上を脱がし、下を脱がし・・・唇を重ねようとした瞬間、彼女は言った。
「私、まだ彼のこと・・・それでも出きるよ。そういう女だよ・・・それでもいい?」
体を重ねることはしごく簡単なことだった。それでも彼の手は止まった。欲しいのは目の前の裸ではない。彼女を抱きたいから好きだと言ったんじゃない。性欲のために相談に乗ってたわけじゃない。
一線は越えることなく終わった。それが彼にとって、そして彼女にとっても最良の選択であったことは、その後二人が何でも話せるよき理解者となったことからも分かる。彼はその日、人生の大きな選択を、最もいい形で選ぶことが出来た。
二人はそれからも食事をし、おしゃべりをした。
そしてまた夏が来る。
次回:vol11 プロローグ最終話、そして出会う。
手を繋いだ夜から二人は以前にもまして食事に行ったり、しゃべったりする時間は増えた。微妙な距離感を残して。そんなある日、直子は彼の家に行く。一線を越える刹那、「まだ良太郎のことが好きだよ・・・私は。それでもいい?」その言葉に、彼は本当に欲しかったのは直子の体ではなく心だと気付き、その手を止めた。
第十話:本当に欲しかったもの。
食事に行くことも増えた。しゃべる時間も増えた。ある時は泥酔した彼が酔って直子さんに電話をして、そのまま寝てしまったこともあった。
彼は特に何かを求めたわけではなかった。
ある夜、その日は特に月がきれいだった。満月。彼は直子さんを呼び出した。月夜の散歩。彼は彼女を見つめ、彼女は月に違う男を見ていた。それでも良かった。その距離感が丁度いいのだと思っていた。
そんなとき、直子さんが彼の家に遊びに来た。名目は将棋を教えると言うことだった。彼は実家暮らし。母親や妹の目を避けつつ、部屋に招きいれた。もちろんばれていたわけだが。将棋のルールをひとしきり教え終わると、そこには妙な空気が流れていた。他の部屋には家族がいるというのに。彼は直子さんを押し倒していた。抱きしめたくてしょうがなかった。彼女も半分はそのつもりであったのだろう。特に抵抗することも無かった。上を脱がし、下を脱がし・・・唇を重ねようとした瞬間、彼女は言った。
「私、まだ彼のこと・・・それでも出きるよ。そういう女だよ・・・それでもいい?」
体を重ねることはしごく簡単なことだった。それでも彼の手は止まった。欲しいのは目の前の裸ではない。彼女を抱きたいから好きだと言ったんじゃない。性欲のために相談に乗ってたわけじゃない。
一線は越えることなく終わった。それが彼にとって、そして彼女にとっても最良の選択であったことは、その後二人が何でも話せるよき理解者となったことからも分かる。彼はその日、人生の大きな選択を、最もいい形で選ぶことが出来た。
二人はそれからも食事をし、おしゃべりをした。
そしてまた夏が来る。
次回:vol11 プロローグ最終話、そして出会う。
vol9 大学3年生夏
2006年7月24日 連載vol9の概要
夏。恋の季節。彼は先輩の直子さんから相談を受けた。恋人の良太郎から別れを切り出されて、それを受け入れきれてない様子。相談を受けているうちに、彼はいつしか、直子さんに魅かれている自分に気付く。
第9話:手を握り締めていいですか
5月そのものの存在をなくす事で、美保への思いを忘れようとした彼。思いのほか忙しいことも手伝って、そんなには引きずることはなかった。それどころか、美保との出会いは彼を一つ成長させた。今まで、やはりどこかに、恋愛=純粋という幻想を抱いていた彼。泥をなめるかのような体験は彼の精神を一つ大きく、打たれ強くさせた。
そんな夏の初め、彼は先輩の直子さんから相談を受ける。直子さんは、彼が辞めた演劇部の先輩で、一緒に辞めた良太郎の彼女さんだ。
「良太郎にふられた。どうしていいか分からない」
かなり情緒不安定に見えた。彼には話を聞くこと、そして無難なアドバイスをすることぐらいしか出来なかった。決してキレイな恋愛とはいえないこの二人の恋を、涙とともに聞かされた彼。たいした助けにもなってあげれていないのに、それでも頼られていることにどこか嬉しさを感じていた。
「何とかしてよりを戻したい。彼なしでは・・・」
しかし、この二人の関係は残念ながらもう戻ることの出来ないところまでいっていたようだ。彼にとってはどちらも大切な人だし、今回の一件は、特にどちらかに非がある話でもなかったため、余計に苦しい思いをした。
そんな中で、彼の中である変化がおきます。
先輩という存在から、恋人を失った女性、そして人間的に尊敬できる存在、、、それが「恋愛感情」にかわるまでの時間はかなり短かったと言える。親友、良太郎の彼女(まぁ今は元彼女なわけですが)であり、先輩である直子さんへの感情をひたすらに隠し、相談を受け続ける彼。
『これは何かの間違いだ』と自分に言い聞かせ。
普通に食事にも行った。
ある晩、食事の後に街をぶらついた。なぜだろう。分からない。でも彼が口にしたのは、
「手を繋いでもいいですか?」
驚く直子さん。そりゃそうだ。
「いいよ・・・」
驚く彼。そりゃそうだ。
特に何があるわけじゃない。ただ手を繋いで街を練り歩く。くしくもそこは北の坂。彼は直子さんに、思いを告げた。でも何を求めるわけでもなく。彼女の心は良太郎の元にあった。それでも変わること無い手の温もり。
次回:vol10 本当に欲しかったもの。
夏。恋の季節。彼は先輩の直子さんから相談を受けた。恋人の良太郎から別れを切り出されて、それを受け入れきれてない様子。相談を受けているうちに、彼はいつしか、直子さんに魅かれている自分に気付く。
第9話:手を握り締めていいですか
5月そのものの存在をなくす事で、美保への思いを忘れようとした彼。思いのほか忙しいことも手伝って、そんなには引きずることはなかった。それどころか、美保との出会いは彼を一つ成長させた。今まで、やはりどこかに、恋愛=純粋という幻想を抱いていた彼。泥をなめるかのような体験は彼の精神を一つ大きく、打たれ強くさせた。
そんな夏の初め、彼は先輩の直子さんから相談を受ける。直子さんは、彼が辞めた演劇部の先輩で、一緒に辞めた良太郎の彼女さんだ。
「良太郎にふられた。どうしていいか分からない」
かなり情緒不安定に見えた。彼には話を聞くこと、そして無難なアドバイスをすることぐらいしか出来なかった。決してキレイな恋愛とはいえないこの二人の恋を、涙とともに聞かされた彼。たいした助けにもなってあげれていないのに、それでも頼られていることにどこか嬉しさを感じていた。
「何とかしてよりを戻したい。彼なしでは・・・」
しかし、この二人の関係は残念ながらもう戻ることの出来ないところまでいっていたようだ。彼にとってはどちらも大切な人だし、今回の一件は、特にどちらかに非がある話でもなかったため、余計に苦しい思いをした。
そんな中で、彼の中である変化がおきます。
先輩という存在から、恋人を失った女性、そして人間的に尊敬できる存在、、、それが「恋愛感情」にかわるまでの時間はかなり短かったと言える。親友、良太郎の彼女(まぁ今は元彼女なわけですが)であり、先輩である直子さんへの感情をひたすらに隠し、相談を受け続ける彼。
『これは何かの間違いだ』と自分に言い聞かせ。
普通に食事にも行った。
ある晩、食事の後に街をぶらついた。なぜだろう。分からない。でも彼が口にしたのは、
「手を繋いでもいいですか?」
驚く直子さん。そりゃそうだ。
「いいよ・・・」
驚く彼。そりゃそうだ。
特に何があるわけじゃない。ただ手を繋いで街を練り歩く。くしくもそこは北の坂。彼は直子さんに、思いを告げた。でも何を求めるわけでもなく。彼女の心は良太郎の元にあった。それでも変わること無い手の温もり。
次回:vol10 本当に欲しかったもの。
コーヒーブレイク。
本来は秘密に書いてる内容かな。
連載とは無関係。
オシム監督の紹介で、以下のような事があった。
40年前、日本に来たオシム監督。
カラーテレビに感動した。
田舎道を自転車で走ってたら見ず知らずの方からナシをもらったことに感動した。
それから親日家だと。
私は帰国子女。
何だか分かるな〜と。
貴方の今日の優しさは、将来の英雄を生むかもしれない。
貴方の今日の醜さは、将来の犯罪者を生むかもしれない。
言いすぎですが、本当にちょっとしたことがきっかけで、
その人の人生や価値観って変わるものだと思ってます。
ボクは今日、人に優しく出来るかな。
ってな偽善ぶった私がいるわけですが、一方で以下のような考えも持ってます。
話す前に、できるだけ、「好意的に」話を聞いてもらえると・・・
芸人が不祥事を起こした。
野球チームが解散し、働きかけがあって結果存続した。
私は別に特別な感情を持っているわけではないが、
「うがった見方」をすれば、チーム監督は賢いな、とか思うわけです。
不祥事後にスグにアクションすることで、
周りからの支援を得、結果チームは最良の形で存続した。
<もしかしたら> もしあのタイミングで解散宣言をしてなかったら、
遠征先の不祥事ということもあって、
一部のマスコミがバッシングしたり、責任問題と騒ぎ立てたかも知れない。
もちろん、そんなことは無かったかも知れないが、
解散宣言によって、その可能性は0になったように思われる。
大衆・マスコミを味方にした、あの行動は、かなり賢いなと。
非難しているわけではない。
ただ、物事を一方向から見るのが嫌いな私のうがった見方。
学べることは、『アクションが速い』事が重要であること。
※もちろん、純粋な行動であった可能性もあります。
その辺、ご了承下さい。
本来は秘密に書いてる内容かな。
連載とは無関係。
オシム監督の紹介で、以下のような事があった。
40年前、日本に来たオシム監督。
カラーテレビに感動した。
田舎道を自転車で走ってたら見ず知らずの方からナシをもらったことに感動した。
それから親日家だと。
私は帰国子女。
何だか分かるな〜と。
貴方の今日の優しさは、将来の英雄を生むかもしれない。
貴方の今日の醜さは、将来の犯罪者を生むかもしれない。
言いすぎですが、本当にちょっとしたことがきっかけで、
その人の人生や価値観って変わるものだと思ってます。
ボクは今日、人に優しく出来るかな。
ってな偽善ぶった私がいるわけですが、一方で以下のような考えも持ってます。
話す前に、できるだけ、「好意的に」話を聞いてもらえると・・・
芸人が不祥事を起こした。
野球チームが解散し、働きかけがあって結果存続した。
私は別に特別な感情を持っているわけではないが、
「うがった見方」をすれば、チーム監督は賢いな、とか思うわけです。
不祥事後にスグにアクションすることで、
周りからの支援を得、結果チームは最良の形で存続した。
<もしかしたら> もしあのタイミングで解散宣言をしてなかったら、
遠征先の不祥事ということもあって、
一部のマスコミがバッシングしたり、責任問題と騒ぎ立てたかも知れない。
もちろん、そんなことは無かったかも知れないが、
解散宣言によって、その可能性は0になったように思われる。
大衆・マスコミを味方にした、あの行動は、かなり賢いなと。
非難しているわけではない。
ただ、物事を一方向から見るのが嫌いな私のうがった見方。
学べることは、『アクションが速い』事が重要であること。
※もちろん、純粋な行動であった可能性もあります。
その辺、ご了承下さい。
vol8 失われた5月
2006年7月19日 連載 コメント (4)vol8の概要
演劇を通じて知り合った美保。皮肉にも大学1年生の時に恋した相手と同じ音。しかし、今度の恋は、出会いから別れまでが1ヶ月という、彼の中では最短の恋だった。そして彼の中ではこの年の5月は、存在しなかったことになる。
第8話:失われた5月
彼の弟子生活の主な活動は、他劇団の受付の手伝い・自劇団の雑用・受付、そして宣伝活動などであった。週末はほぼどこかの劇団の受付の手伝いに入り、受付の方法からお客さんの誘導方法まで、彼は経験を積み上げていた。そんな中、ゴールデンウィークに彼はある劇団の手伝いに入る。
そこで、彼は一人の女性、美保と知り合う。一目で彼女を気に入った彼は、彼にしては珍しいと言うべきスピードで、美保にアプローチをかけた。
雑用で買出しに二人で出かけた彼は、途中ではぐれてはいけないと美保の電話番号を聞きだし、その夜、さっそく電話をするのだった。
「こんなことを突然言うのはおかしいかもしれない・・・」
「でも、この思いをどうしても伝えたくて・・・」
「今付き合っている人がいなくて、私のことが嫌いじゃないなら・・・」
後にも先にもこんな積極的な彼はいただろうか・・・という程、熱烈にアプローチし、強引に押し切った彼。もちろん、出会ってから数日だということで、お互いに何も知らないままに付き合うこととなる。
それでも彼は幸せを感じていた。
だがしかし、ここから急降下が始まる。
彼の強引なアプローチによって付き合うこととなった二人だが、美保からいくつかの条件が出ていた。単純明快、キスやそれ以上の関係はしばらくお預けということ。しかしそれは彼にとって対した問題ではなかった。
付き合ってすぐに、美保の誕生日が来た。彼はたまたま用事で、海の見える丘に来ていた。北の坂。そう、美穂とデートしたあの場所である。彼はそこで、世界で唯一つの香水を作る。そういう場所があるのだ。いくつかの匂いの中から相手をイメージし、選び、そして調合する。美保を思い、美保のために作った香水、それが誕生日プレゼントだった。それ以外にも、美保の好きなブランドの香水も購入していた。
その両方を美保は喜んでくれた。まだ五月の中ごろ。この幸せが続けばよかったのに・・・。
数日して、美保からとても重大な、彼にとってはとても大きな話を聞くことになる。
「今、肉体関係を禁止しているけど・・・私はしたくなったらその辺の人とするよ・・・」
耳を疑った。何を言っているのか分からなかった。未だまだ純情といえる彼には衝撃的だった。
「それは・・・その時、オレを呼び出したらいいんじゃない?」
「そうかも知れないけど、やっちゃうかもしれない」
「そうか・・・でもそれはまだ先の話だし、そうならない可能性もあるわけで・・・」
彼には将来の不安を理由に分かれるということは到底納得の行く事ではなかった。
「私はそういう女よ・・・以前学校で後輩の男の子と廊下で・・・」
それを聞いて彼に何と言って欲しかったのだろうか。悩む以外に彼ができたことはあったのだろうか。それでも一晩考えて、彼は一つの決断を下した。
「どんな過去があったとしても、オレは今の美保を好きになった」
「色んな過去があって今の美保がいるわけだから、気にしない」
「将来どんな過ちが起こるかも知れないが、それはそれが起きた時に考えよう」
その夜、彼は美保を抱きしめて寝た。
五月も残りわずかとなった。
彼は彼の先輩が主催する公演の手伝いに言った。公演自体は無事終了し、先輩たちとの打ち上げが始まった。彼は美保に電話をし、彼に恋人が出来たことを発表していいかと聞いた。美保は「いいよ」と快諾してくれた。
彼の恋人できました宣言は、彼を可愛がっていた先輩たちから大いに歓迎され、祝福された。その夜、彼は初めて自分の惚気話をした。
呑みすぎで昼過ぎまで寝ていただろうか。片付けて家に帰った時には夕方だった。
彼の携帯が鳴った。
美保からだった。
昨日のことがあったので、彼は少し高い目のテンションで電話に出る。
「もしもし」
「・・・」
「やっぱり、いつか傷つけることになる・・・」
「分かれましょう」
目の前が真っ暗とはこのことを言うのかと、彼は他人事に思った。なぜ。なぜ昨日の今日なんだ。なぜ先輩に報告した後なんだ。なぜ、なぜ、なぜ・・・
悩んだところで答えなど知る由も無い。彼は大きなどす黒い塊に自分の体が押しつぶされる感触を初めて体験した。泣いた。泣いてもどうしようもないけど泣いた。
この年の5月は、彼の中では存在しないことと決めた。
次回:vol9 大学3年生夏
演劇を通じて知り合った美保。皮肉にも大学1年生の時に恋した相手と同じ音。しかし、今度の恋は、出会いから別れまでが1ヶ月という、彼の中では最短の恋だった。そして彼の中ではこの年の5月は、存在しなかったことになる。
第8話:失われた5月
彼の弟子生活の主な活動は、他劇団の受付の手伝い・自劇団の雑用・受付、そして宣伝活動などであった。週末はほぼどこかの劇団の受付の手伝いに入り、受付の方法からお客さんの誘導方法まで、彼は経験を積み上げていた。そんな中、ゴールデンウィークに彼はある劇団の手伝いに入る。
そこで、彼は一人の女性、美保と知り合う。一目で彼女を気に入った彼は、彼にしては珍しいと言うべきスピードで、美保にアプローチをかけた。
雑用で買出しに二人で出かけた彼は、途中ではぐれてはいけないと美保の電話番号を聞きだし、その夜、さっそく電話をするのだった。
「こんなことを突然言うのはおかしいかもしれない・・・」
「でも、この思いをどうしても伝えたくて・・・」
「今付き合っている人がいなくて、私のことが嫌いじゃないなら・・・」
後にも先にもこんな積極的な彼はいただろうか・・・という程、熱烈にアプローチし、強引に押し切った彼。もちろん、出会ってから数日だということで、お互いに何も知らないままに付き合うこととなる。
それでも彼は幸せを感じていた。
だがしかし、ここから急降下が始まる。
彼の強引なアプローチによって付き合うこととなった二人だが、美保からいくつかの条件が出ていた。単純明快、キスやそれ以上の関係はしばらくお預けということ。しかしそれは彼にとって対した問題ではなかった。
付き合ってすぐに、美保の誕生日が来た。彼はたまたま用事で、海の見える丘に来ていた。北の坂。そう、美穂とデートしたあの場所である。彼はそこで、世界で唯一つの香水を作る。そういう場所があるのだ。いくつかの匂いの中から相手をイメージし、選び、そして調合する。美保を思い、美保のために作った香水、それが誕生日プレゼントだった。それ以外にも、美保の好きなブランドの香水も購入していた。
その両方を美保は喜んでくれた。まだ五月の中ごろ。この幸せが続けばよかったのに・・・。
数日して、美保からとても重大な、彼にとってはとても大きな話を聞くことになる。
「今、肉体関係を禁止しているけど・・・私はしたくなったらその辺の人とするよ・・・」
耳を疑った。何を言っているのか分からなかった。未だまだ純情といえる彼には衝撃的だった。
「それは・・・その時、オレを呼び出したらいいんじゃない?」
「そうかも知れないけど、やっちゃうかもしれない」
「そうか・・・でもそれはまだ先の話だし、そうならない可能性もあるわけで・・・」
彼には将来の不安を理由に分かれるということは到底納得の行く事ではなかった。
「私はそういう女よ・・・以前学校で後輩の男の子と廊下で・・・」
それを聞いて彼に何と言って欲しかったのだろうか。悩む以外に彼ができたことはあったのだろうか。それでも一晩考えて、彼は一つの決断を下した。
「どんな過去があったとしても、オレは今の美保を好きになった」
「色んな過去があって今の美保がいるわけだから、気にしない」
「将来どんな過ちが起こるかも知れないが、それはそれが起きた時に考えよう」
その夜、彼は美保を抱きしめて寝た。
五月も残りわずかとなった。
彼は彼の先輩が主催する公演の手伝いに言った。公演自体は無事終了し、先輩たちとの打ち上げが始まった。彼は美保に電話をし、彼に恋人が出来たことを発表していいかと聞いた。美保は「いいよ」と快諾してくれた。
彼の恋人できました宣言は、彼を可愛がっていた先輩たちから大いに歓迎され、祝福された。その夜、彼は初めて自分の惚気話をした。
呑みすぎで昼過ぎまで寝ていただろうか。片付けて家に帰った時には夕方だった。
彼の携帯が鳴った。
美保からだった。
昨日のことがあったので、彼は少し高い目のテンションで電話に出る。
「もしもし」
「・・・」
「やっぱり、いつか傷つけることになる・・・」
「分かれましょう」
目の前が真っ暗とはこのことを言うのかと、彼は他人事に思った。なぜ。なぜ昨日の今日なんだ。なぜ先輩に報告した後なんだ。なぜ、なぜ、なぜ・・・
悩んだところで答えなど知る由も無い。彼は大きなどす黒い塊に自分の体が押しつぶされる感触を初めて体験した。泣いた。泣いてもどうしようもないけど泣いた。
この年の5月は、彼の中では存在しないことと決めた。
次回:vol9 大学3年生夏
vol7 大学3年生春
2006年7月18日 連載vol7の概要
芝居を本格的に始めた彼。プロの劇団に出入りするようになる。
第七話:嵐の前の静けさ
彼はまず、大学の先輩にあたるプロ劇団の戸をたたいた。彼が目指していたのは役者ではなく、裏方。本当にこのころの彼は純粋で、「こんなに面白い存在(演劇)をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という熱い思いが彼を突き動かしていた。
先輩劇団から、ある劇団を紹介してもらい、そこに押しかけ女房的に弟子入りした彼。彼の仕事は主に雑用全般。
大学の授業はほとんどほったらかしに、芝居とバイトに専念していた。
バイトの話をしていなかったように思う。
彼は実家と駅の間にあるフランス料理屋でバイトをしていた。その料理屋の目の前にあるコンビニでバイトをするつもりで面接したのだが、あまり感触が良くなく、帰りがけに見たフランス料理屋の求人貼り紙。面接は夜、営業が終わった後に行われた。
オーナー「君はお酒は飲めるのか」
彼「たしなむ程度です・・・」
オーナー「ただ料理を出すだけではない。お酒を提案したりするから、お酒の味も覚えなさい」
その場で採用が決まり、数日後から働き出した。芝居にも理解のあるオーナーで、本番前はまとまった休みを取ることも許してもらえた。
後日、コンビニから「いつから入れる?」との電話連絡があったが、かなり「いまさら」であったことを付け加えておく。
さて、話は芝居に戻る。演劇部を辞めた直後のクリスマスに、彼は弟子入りした劇団の芝居を観ていた。正確にはその劇団をより知るために観たと言った方がいいかもしれない。泣いた。2度同じ芝居を観て、2回ともないた。ここしかないと思った。
年が明け、本格的に活動を開始した。春には次の公演が迫っていた。彼の演劇部での知識は半分は役に立ち、半分は邪魔であった。間違った知識がいかに役にたたないかを思い知らされた。
それでも彼はやる気とはったりだけは人一倍であったと思う。春の公演に先立ち、他の劇団の手伝いに武者修行(笑)に出たり細かな雑用は進んでやっていた。そして春の公演では、劇団の受付に入り、無事公演の成功に一役買った、といえば大げさではあるが、彼の演劇人生が幕開けした。
次回:失われた5月
芝居を本格的に始めた彼。プロの劇団に出入りするようになる。
第七話:嵐の前の静けさ
彼はまず、大学の先輩にあたるプロ劇団の戸をたたいた。彼が目指していたのは役者ではなく、裏方。本当にこのころの彼は純粋で、「こんなに面白い存在(演劇)をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という熱い思いが彼を突き動かしていた。
先輩劇団から、ある劇団を紹介してもらい、そこに押しかけ女房的に弟子入りした彼。彼の仕事は主に雑用全般。
大学の授業はほとんどほったらかしに、芝居とバイトに専念していた。
バイトの話をしていなかったように思う。
彼は実家と駅の間にあるフランス料理屋でバイトをしていた。その料理屋の目の前にあるコンビニでバイトをするつもりで面接したのだが、あまり感触が良くなく、帰りがけに見たフランス料理屋の求人貼り紙。面接は夜、営業が終わった後に行われた。
オーナー「君はお酒は飲めるのか」
彼「たしなむ程度です・・・」
オーナー「ただ料理を出すだけではない。お酒を提案したりするから、お酒の味も覚えなさい」
その場で採用が決まり、数日後から働き出した。芝居にも理解のあるオーナーで、本番前はまとまった休みを取ることも許してもらえた。
後日、コンビニから「いつから入れる?」との電話連絡があったが、かなり「いまさら」であったことを付け加えておく。
さて、話は芝居に戻る。演劇部を辞めた直後のクリスマスに、彼は弟子入りした劇団の芝居を観ていた。正確にはその劇団をより知るために観たと言った方がいいかもしれない。泣いた。2度同じ芝居を観て、2回ともないた。ここしかないと思った。
年が明け、本格的に活動を開始した。春には次の公演が迫っていた。彼の演劇部での知識は半分は役に立ち、半分は邪魔であった。間違った知識がいかに役にたたないかを思い知らされた。
それでも彼はやる気とはったりだけは人一倍であったと思う。春の公演に先立ち、他の劇団の手伝いに武者修行(笑)に出たり細かな雑用は進んでやっていた。そして春の公演では、劇団の受付に入り、無事公演の成功に一役買った、といえば大げさではあるが、彼の演劇人生が幕開けした。
次回:失われた5月
vol6 大学2年生冬
2006年7月15日 連載vol6の概要
美穂への思いにけじめをつけ、歩とも別れ、彼は新しい一歩を踏み出すことになる。演劇部を辞めて、プロの劇団に出入りし、本格的に芝居をやっていこうとする。
第六話:トイレで誓う。
冬、一年の集大成の芝居の時期。このころの彼は、学校へは友人に会い、芝居をするためだけに来ていた。歩が東京へ行ってしばらくはどうしていいか分からない思いでいっぱいだった。
そんな中で彼の芝居に対する気持ちは膨れ上がる。それまで、異性の気を引くためと言うきわめて純粋な気持ちで芝居に接してきた彼が、いつのまにか、芝居そのものの魅力に取り付かれていたのだ。そんな矢先、彼はまたあの劇団の芝居を見ることになる。キャラメルボックス。この劇団は彼の芝居人生の節目に必ずといっていいほど出てくる。
『遊びでやっていたけど、一度本気でやってみたい・・・』
いつからかそう思うようになった彼は、同じく本気で芝居の道に進もうと考えていた、友人、良太郎と冬の芝居を最後に演劇部をやめる決心をした。
冬の芝居は無事に終わった。彼と良太郎は毎晩遅くまで語り合い、夢を見た。二人の決心は固く、そして揺るぐことは無かった。
演劇部の先輩も、薄々は彼らの決断を気付いていた事だと思う。それでも彼らは彼らの口から部長に決意を述べたかった。
公演最終日のあとは、片付け、そして打ち上げというのが相場だ。今回の打ち上げは焼肉屋だった。彼は決してお酒が強いわけではなかった。それでも呑まずにはいられなかった。
「おかわり!」
何杯目の泡盛だっただろう・・・おかしい、ちっとも酔えない。そろそろ終盤。いつ切り出そう・・・。その時、彼は良太郎を呼び出した。トイレに。明らかに酔ってはいたのだろう。
「1次会が終わったら言おう。2次会がはじまったらバラバラになる・・・」
「俺たちは部を裏切るわけじゃないよな」
「演劇部にめぐりあえたから、本当に魅力的だから、上を目指したいと思ったんだ」
「頑張ろうな」
「みんなにあいつらすげーな、って思ってもらえるように・・・」
小さな、どう考えても1人用のトイレで、大の男が二人、泣いた。トイレットペーパーで泣いた。声を殺して泣いた。
店を出て、1次会をしめた直後、二人は部長の前に進み出た。単純に、そしてこれからのことも含めて、思いのたけを伝えた。
「そうか。がんばれよ!」
先輩の言葉はとても短く単純で、二人の涙腺を緩めるには十分過ぎるほど暖かさがあった。
泣く場面じゃないが声を出して泣いた。そして一気に酔いが回った。
次回:大学3年生春
美穂への思いにけじめをつけ、歩とも別れ、彼は新しい一歩を踏み出すことになる。演劇部を辞めて、プロの劇団に出入りし、本格的に芝居をやっていこうとする。
第六話:トイレで誓う。
冬、一年の集大成の芝居の時期。このころの彼は、学校へは友人に会い、芝居をするためだけに来ていた。歩が東京へ行ってしばらくはどうしていいか分からない思いでいっぱいだった。
そんな中で彼の芝居に対する気持ちは膨れ上がる。それまで、異性の気を引くためと言うきわめて純粋な気持ちで芝居に接してきた彼が、いつのまにか、芝居そのものの魅力に取り付かれていたのだ。そんな矢先、彼はまたあの劇団の芝居を見ることになる。キャラメルボックス。この劇団は彼の芝居人生の節目に必ずといっていいほど出てくる。
『遊びでやっていたけど、一度本気でやってみたい・・・』
いつからかそう思うようになった彼は、同じく本気で芝居の道に進もうと考えていた、友人、良太郎と冬の芝居を最後に演劇部をやめる決心をした。
冬の芝居は無事に終わった。彼と良太郎は毎晩遅くまで語り合い、夢を見た。二人の決心は固く、そして揺るぐことは無かった。
演劇部の先輩も、薄々は彼らの決断を気付いていた事だと思う。それでも彼らは彼らの口から部長に決意を述べたかった。
公演最終日のあとは、片付け、そして打ち上げというのが相場だ。今回の打ち上げは焼肉屋だった。彼は決してお酒が強いわけではなかった。それでも呑まずにはいられなかった。
「おかわり!」
何杯目の泡盛だっただろう・・・おかしい、ちっとも酔えない。そろそろ終盤。いつ切り出そう・・・。その時、彼は良太郎を呼び出した。トイレに。明らかに酔ってはいたのだろう。
「1次会が終わったら言おう。2次会がはじまったらバラバラになる・・・」
「俺たちは部を裏切るわけじゃないよな」
「演劇部にめぐりあえたから、本当に魅力的だから、上を目指したいと思ったんだ」
「頑張ろうな」
「みんなにあいつらすげーな、って思ってもらえるように・・・」
小さな、どう考えても1人用のトイレで、大の男が二人、泣いた。トイレットペーパーで泣いた。声を殺して泣いた。
店を出て、1次会をしめた直後、二人は部長の前に進み出た。単純に、そしてこれからのことも含めて、思いのたけを伝えた。
「そうか。がんばれよ!」
先輩の言葉はとても短く単純で、二人の涙腺を緩めるには十分過ぎるほど暖かさがあった。
泣く場面じゃないが声を出して泣いた。そして一気に酔いが回った。
次回:大学3年生春
vol5 大学2年生春〜夏そして秋
2006年7月4日 連載vol5の概要:
美穂への思いは消えない。歩と何度か体を重ねた末、彼は美穂への思いを断ち切り、きちんと歩と向かい合う決心をした。しかしその決心は少し遅かったのかも知れない。歩とも別れが待っていた。
第五話:疑いの先に無くしたもの。
歩とはデートを何度か繰り返した。歩は彼の声が特に好きだと言った。彼は歩の体に没頭していた。人生で初めて経験する快楽を年下の歩から教わることと、美穂への思いが消えていないことに悩まされながら。二人の関係は誰にばれることもなく、また二人が会う頻度は決して多いわけではなった。
大学2年生になり、彼にも後輩ができた。その後輩の中に、彼の好みの女性がいた。何が面白いって、美穂を奪い合った高太郎もその女性、泉、にホの字だというこだろう。
学生生活のほとんどが、彼にとっては演劇部の活動であった。このころから、授業にまともに出なくなり、一日、芝居の稽古をしたり、部室でだらけてたりするようになった。
芝居を一生懸命やるのは、後輩の泉の気を引くためになってきていた。美穂のことは忘れたわけではないが、糸を引くことも少なくなった。それでも歩とはたまに会っていた分けだが・・・。
彼の中で一つの変化が生まれ始めていた。不純な、女の子の気を引くために頑張っていた芝居だったが、だんだんと、芝居そのものに魅せられてきていた。それにつれて、余計に授業にはでなくなっていた。歩と会う回数も減っていた。
そしてまた夏が来る。その頃はもう芝居に熱中するようになり、それに伴って美穂への思いも薄らいでいた。泉のことは気に入ってはいたが、どうこうしたいという分けではなかった。彼は恒例の演劇部合宿で一人考え、歩ときちんと向き合う気持ちを固めた。
合宿が終わった後は新人公演が待っている。彼は去年は出演、今年は裏方。めまぐるしい日々が続いた。
それとほぼ同時に、歩も一つの芝居に参加した。それは本来、高校生の歩が参加できるものではなかったのだが、紹介とつてで特別に参加していた。彼らが稽古をするすぐ近くで、歩たちも稽古をしていた。歩たちのグループの半数は彼の先輩や知り合いだった。しかし、彼は稽古の時は歩と接触を持とうとはしなかった。
彼の方の新人公演が一足早く終わり、彼は歩にきちんと付き合う、そういう話をする決心をしていた。そんな夏の終わり、彼は良からぬ噂を耳にする。歩が彼の演劇部同期の男の部屋で生活しているというものだった。歩が参加しているグループの関係者であり、稽古場から近いから・・・と納得できるはずも無い。さらのもっと良からぬ噂では、歩はそっちの団体の代表者に肉体的に言い寄ったらしい・・・彼の中で何かが崩れ落ちていった。真相を問いただすことも出来ないまま、運命は残酷に二人を分かつ。歩は公演が終わってまもなく、東京へ行ってしまった。別れをちゃんと言えないまま、しばらくは連絡も取り合っていたのだが、いつしか歩の電話は繋がらなくなった。それでも、今なお、彼の携帯には繋がらなくなった歩の電話番号が残っている。真実を聞けなかった自らの愚かさを風化させないために。
次回:vol6 大学2年生冬
※相互リンクされていない方もご覧になっているようで・・・
ありがたいことです。こんな日記に足を運んで下さって。
最近秘密日記はあまり書いてませんが、今後は書きます。
もしそちらもご覧になりたい方は、リンク&コメント頂ければ、
数が許す限り相互リンク張らせて頂きます。
秘密は見たいけど、ご自身の日記は読まれたくない・・・
って場合はおっしゃっていただけたら読みません(笑
美穂への思いは消えない。歩と何度か体を重ねた末、彼は美穂への思いを断ち切り、きちんと歩と向かい合う決心をした。しかしその決心は少し遅かったのかも知れない。歩とも別れが待っていた。
第五話:疑いの先に無くしたもの。
歩とはデートを何度か繰り返した。歩は彼の声が特に好きだと言った。彼は歩の体に没頭していた。人生で初めて経験する快楽を年下の歩から教わることと、美穂への思いが消えていないことに悩まされながら。二人の関係は誰にばれることもなく、また二人が会う頻度は決して多いわけではなった。
大学2年生になり、彼にも後輩ができた。その後輩の中に、彼の好みの女性がいた。何が面白いって、美穂を奪い合った高太郎もその女性、泉、にホの字だというこだろう。
学生生活のほとんどが、彼にとっては演劇部の活動であった。このころから、授業にまともに出なくなり、一日、芝居の稽古をしたり、部室でだらけてたりするようになった。
芝居を一生懸命やるのは、後輩の泉の気を引くためになってきていた。美穂のことは忘れたわけではないが、糸を引くことも少なくなった。それでも歩とはたまに会っていた分けだが・・・。
彼の中で一つの変化が生まれ始めていた。不純な、女の子の気を引くために頑張っていた芝居だったが、だんだんと、芝居そのものに魅せられてきていた。それにつれて、余計に授業にはでなくなっていた。歩と会う回数も減っていた。
そしてまた夏が来る。その頃はもう芝居に熱中するようになり、それに伴って美穂への思いも薄らいでいた。泉のことは気に入ってはいたが、どうこうしたいという分けではなかった。彼は恒例の演劇部合宿で一人考え、歩ときちんと向き合う気持ちを固めた。
合宿が終わった後は新人公演が待っている。彼は去年は出演、今年は裏方。めまぐるしい日々が続いた。
それとほぼ同時に、歩も一つの芝居に参加した。それは本来、高校生の歩が参加できるものではなかったのだが、紹介とつてで特別に参加していた。彼らが稽古をするすぐ近くで、歩たちも稽古をしていた。歩たちのグループの半数は彼の先輩や知り合いだった。しかし、彼は稽古の時は歩と接触を持とうとはしなかった。
彼の方の新人公演が一足早く終わり、彼は歩にきちんと付き合う、そういう話をする決心をしていた。そんな夏の終わり、彼は良からぬ噂を耳にする。歩が彼の演劇部同期の男の部屋で生活しているというものだった。歩が参加しているグループの関係者であり、稽古場から近いから・・・と納得できるはずも無い。さらのもっと良からぬ噂では、歩はそっちの団体の代表者に肉体的に言い寄ったらしい・・・彼の中で何かが崩れ落ちていった。真相を問いただすことも出来ないまま、運命は残酷に二人を分かつ。歩は公演が終わってまもなく、東京へ行ってしまった。別れをちゃんと言えないまま、しばらくは連絡も取り合っていたのだが、いつしか歩の電話は繋がらなくなった。それでも、今なお、彼の携帯には繋がらなくなった歩の電話番号が残っている。真実を聞けなかった自らの愚かさを風化させないために。
次回:vol6 大学2年生冬
※相互リンクされていない方もご覧になっているようで・・・
ありがたいことです。こんな日記に足を運んで下さって。
最近秘密日記はあまり書いてませんが、今後は書きます。
もしそちらもご覧になりたい方は、リンク&コメント頂ければ、
数が許す限り相互リンク張らせて頂きます。
秘密は見たいけど、ご自身の日記は読まれたくない・・・
って場合はおっしゃっていただけたら読みません(笑
vol4 大学1年生冬〜大学2年生春
2006年7月1日 連載 コメント (1)vol4の概要:
別れは新しい出会いを導く。彼は美穂の後輩、歩(あゆみ)と知り合う。美穂への思いをどこかに残したまま、彼は歩と初めての夜を迎える・・・
第4話:雨降る街角
集大成と言える公演は無事終演を迎えた。その芝居を観に来ていた美穂の後輩、歩から彼はメールの交換を申し出られた。歩は彼が観に行った美穂の学園祭での芝居で主役を張っていた子だった。歩は彼の声が素敵だといい、鈍感な彼でも分かるほどのアプローチをかけてきた。
「オレは君の先輩の美穂のことが今でも好きなんだよ」
「それでもかまいません!」
若さゆえか、その情熱ゆえか、歩が引くことは無かった。メールを交わし、電話で話し、食事に行くほどの仲になった。歩は正直可愛い存在であった。しかし、彼の心の中には美穂への思いがまだ確実に存在していた。
一方で彼はあることに焦りを感じていた。20代を目前として(彼は4月生まれなので)未だに経験が無いことに。それは決して恥ずべきことでもなければ、焦ることでもないのだが、彼にも犬に食わせてしまえばいいようなプライドに似た「見栄」があった。
美穂への思いを残し、何度目かの歩とのデート、その日は雨が降っていた。街中を特に当ても無くぶらつく二人。そして目に入ったのがビルの中にある観覧車。二人っきりの時間が始まる。
『キスがしたい・・・』
彼の中に生まれた欲望。目の前の女の子は自分に好意を持っている分けだから、彼の持って行き方でそれもまた可能であっただろう。しかしそれでも彼は美穂という存在と目の前の歩との間で何か分からない苦しさを覚えていた。
何事も無く、観覧車を降り、雨の街をぶらつく二人。彼の中では欲望と止める事の出来ない思いとが入り混じっていたのは確かだ。
足を止める二人。もう何も聞こえない。ドラマであれば、ここで主題歌がカットインしているのだろう。歩を抱き寄せる彼、重なる唇、地面に落ちる傘、肩を打つ雨、二人を包む灰色の街。
そして、どこかに美穂への思いを抱いたまま、彼はその日、初めての夜を向かえた。
次回:vol5 大学2年生春〜夏そして秋
別れは新しい出会いを導く。彼は美穂の後輩、歩(あゆみ)と知り合う。美穂への思いをどこかに残したまま、彼は歩と初めての夜を迎える・・・
第4話:雨降る街角
集大成と言える公演は無事終演を迎えた。その芝居を観に来ていた美穂の後輩、歩から彼はメールの交換を申し出られた。歩は彼が観に行った美穂の学園祭での芝居で主役を張っていた子だった。歩は彼の声が素敵だといい、鈍感な彼でも分かるほどのアプローチをかけてきた。
「オレは君の先輩の美穂のことが今でも好きなんだよ」
「それでもかまいません!」
若さゆえか、その情熱ゆえか、歩が引くことは無かった。メールを交わし、電話で話し、食事に行くほどの仲になった。歩は正直可愛い存在であった。しかし、彼の心の中には美穂への思いがまだ確実に存在していた。
一方で彼はあることに焦りを感じていた。20代を目前として(彼は4月生まれなので)未だに経験が無いことに。それは決して恥ずべきことでもなければ、焦ることでもないのだが、彼にも犬に食わせてしまえばいいようなプライドに似た「見栄」があった。
美穂への思いを残し、何度目かの歩とのデート、その日は雨が降っていた。街中を特に当ても無くぶらつく二人。そして目に入ったのがビルの中にある観覧車。二人っきりの時間が始まる。
『キスがしたい・・・』
彼の中に生まれた欲望。目の前の女の子は自分に好意を持っている分けだから、彼の持って行き方でそれもまた可能であっただろう。しかしそれでも彼は美穂という存在と目の前の歩との間で何か分からない苦しさを覚えていた。
何事も無く、観覧車を降り、雨の街をぶらつく二人。彼の中では欲望と止める事の出来ない思いとが入り混じっていたのは確かだ。
足を止める二人。もう何も聞こえない。ドラマであれば、ここで主題歌がカットインしているのだろう。歩を抱き寄せる彼、重なる唇、地面に落ちる傘、肩を打つ雨、二人を包む灰色の街。
そして、どこかに美穂への思いを抱いたまま、彼はその日、初めての夜を向かえた。
次回:vol5 大学2年生春〜夏そして秋
vol3 大学1年生 秋〜冬
2006年6月26日 連載vol3の概要:
ライバルに勝ち、美穂と付き合うのもつかの間、彼の未熟さゆえ、美穂とはすぐに分かれと言う結末が待っていた。
第3話:重すぎる。
夏、彼は美穂と付き合うことになる。彼にとっても美穂にとっても、初めて「付き合う」異性であった。しかし、そこは演劇部。夏の活動が忙しく、とてもまともなデートに行ける余裕などもなく、夏は終わりを告げる。
夏が終わり、一段落した頃、彼は美穂をデートに誘った。海の見える丘の上には異人館がいくつもならんでいる。彼は自分の愛情をどう表現していいか分からず、空回りをする。彼は溢れる彼の思いを伝えたかった、手を握りたかった、抱きしめたかった。若すぎる彼の情熱は美穂には苦痛以外の何者でもなかったのであろう。
秋、学園祭の時期。彼は美穂の母校の女学校の学園祭に友人と行く。彼も友人も「うぶ」という言葉が似合うガキ。美穂は彼らを案内するも、当初述べたように、彼は決して「かっこいい」存在ではない。美穂の演劇部の後輩の芝居を観て、その後昔の仲間に紹介するときも「演劇部の仲間」として紹介される彼は少し寂しさとむなしさを覚えるのである。
そうこうし、まだ冬にもならないある秋の日に、彼は美穂に呼び出される。
「貴方の愛は重すぎるの・・・」
もう引き返せない二人の関係。ここまで決定的になる前に話を出来なかったのは二人の未熟さゆえだろう。
この日彼はとても大事な人を失った。そしてそれを忘れようとするかのように演劇に熱中していくのである。その冬、1年間の集大成ともいえる大きな芝居があった。彼は美穂と舞台上で何度もセリフを交わす。しかし、彼の思いが美穂の心と交わることは二度となかった。
次回:vol4 大学1年生冬〜大学2年生春
ライバルに勝ち、美穂と付き合うのもつかの間、彼の未熟さゆえ、美穂とはすぐに分かれと言う結末が待っていた。
第3話:重すぎる。
夏、彼は美穂と付き合うことになる。彼にとっても美穂にとっても、初めて「付き合う」異性であった。しかし、そこは演劇部。夏の活動が忙しく、とてもまともなデートに行ける余裕などもなく、夏は終わりを告げる。
夏が終わり、一段落した頃、彼は美穂をデートに誘った。海の見える丘の上には異人館がいくつもならんでいる。彼は自分の愛情をどう表現していいか分からず、空回りをする。彼は溢れる彼の思いを伝えたかった、手を握りたかった、抱きしめたかった。若すぎる彼の情熱は美穂には苦痛以外の何者でもなかったのであろう。
秋、学園祭の時期。彼は美穂の母校の女学校の学園祭に友人と行く。彼も友人も「うぶ」という言葉が似合うガキ。美穂は彼らを案内するも、当初述べたように、彼は決して「かっこいい」存在ではない。美穂の演劇部の後輩の芝居を観て、その後昔の仲間に紹介するときも「演劇部の仲間」として紹介される彼は少し寂しさとむなしさを覚えるのである。
そうこうし、まだ冬にもならないある秋の日に、彼は美穂に呼び出される。
「貴方の愛は重すぎるの・・・」
もう引き返せない二人の関係。ここまで決定的になる前に話を出来なかったのは二人の未熟さゆえだろう。
この日彼はとても大事な人を失った。そしてそれを忘れようとするかのように演劇に熱中していくのである。その冬、1年間の集大成ともいえる大きな芝居があった。彼は美穂と舞台上で何度もセリフを交わす。しかし、彼の思いが美穂の心と交わることは二度となかった。
次回:vol4 大学1年生冬〜大学2年生春
vol2 大学1年生 夏
2006年6月23日 連載vol2の概要:
彼は頑張った。演劇部、バイト、そして恋愛・・・美穂と付き合うことになる。
第二話:満天の星と波の音。
季節は夏。この年の夏は、彼にとって、その暑さ以上に熱い夏となる。
美穂に思いを寄せるうちに、彼はあることに気付くのだった。演劇部同期の高太郎が、やはり同じく美穂に思いを寄せていることに。部活内の三角関係など、別に珍しいことでも無かったが、彼らの場合はある1点において妙であった。全員うぶだったのだ。いや、笑うこと無かれ。彼らはそれほど純粋に、そして無垢だったわけで・・・。
その頃の彼は、部活動を頑張るのは、そのほとんどが美穂にいいところを見せたい一心であったと言える。
そんなある日、彼と高太郎に美穂が声をかけた・・・
「芝居のチケットが1枚あまったんだけど、どっちか買わない?」
女の子4人で観に行く芝居のチケットが、一人行けなくなったため1枚余ったのだ。彼も高太郎も行きたい。行きたくてしょうがない。
「行く!」
最初に返事をしたのが彼だった。お金やスケジュールは後で考えたらいい。高太郎はそこを一瞬迷ってしまったのだ。しかし、これがある意味において、彼の人生を大きくかえることとなる。
芝居当日、席が2:2で分かれていることを知り、彼は裏から手を回す。今から思えば、なりふり構わず、といった感じであろうか。そしてまんまと美穂の隣に陣取った彼は、
『あ〜今からしばらく、こんな近距離に・・・芝居に集中できね〜』
と思うわけだが、その彼の思いは、芝居が始まる前に早くも消え去る。
キャラメルボックスには有名な加藤さんの前座があった。それを見たとき、彼は既に意識が舞台上にあった。カーテンコールの拍手が鳴り止むまで、彼は隣に美穂がいたことを忘れた。グッドバイノーチラス。この作品が彼の運命を変えた。
【いつか同じ舞台(世界)で活躍したい】
それからの彼は、純粋に演劇にも熱中した。微妙に不純だった彼の熱意が、本当の意味で純粋になった。
夏といえば、合宿。この演劇部にも強化合宿というなのお遊び合宿があった。浜辺。演劇部らしく、余興は即興芝居やネタ大会。花火に肝試し。夏だ。これこそ夏だ。
そんな中、彼は美穂を呼び出す。その頃はまだ「あいのり」などという番組は無かったが、どう考えてもそういうノリだ。浜辺で話をする二人。その遠く後に高太郎がいた。二人のことが気になって散歩にかこつけて探しに来てたのだ。何を話したのだろうか・・・彼が覚えているのは、満天だった星空と、静かに力強く押し寄せる波の音だけだった。でも確かに彼は告白した。もう既にばれまくりの彼の美穂に対する思いを。なんという返事をもらったかも覚えていない。返事は保留だったと思う。ただ、昼間の暑さとはうってかわって、涼しい夏の夜だった。
合宿から帰り、しばらくして、美穂の親友から、
「美穂の答え、多分○だよ」
と教えてもらう。
彼の短い春が始まった。
次回:vol3 大学1年生 秋〜冬
彼は頑張った。演劇部、バイト、そして恋愛・・・美穂と付き合うことになる。
第二話:満天の星と波の音。
季節は夏。この年の夏は、彼にとって、その暑さ以上に熱い夏となる。
美穂に思いを寄せるうちに、彼はあることに気付くのだった。演劇部同期の高太郎が、やはり同じく美穂に思いを寄せていることに。部活内の三角関係など、別に珍しいことでも無かったが、彼らの場合はある1点において妙であった。全員うぶだったのだ。いや、笑うこと無かれ。彼らはそれほど純粋に、そして無垢だったわけで・・・。
その頃の彼は、部活動を頑張るのは、そのほとんどが美穂にいいところを見せたい一心であったと言える。
そんなある日、彼と高太郎に美穂が声をかけた・・・
「芝居のチケットが1枚あまったんだけど、どっちか買わない?」
女の子4人で観に行く芝居のチケットが、一人行けなくなったため1枚余ったのだ。彼も高太郎も行きたい。行きたくてしょうがない。
「行く!」
最初に返事をしたのが彼だった。お金やスケジュールは後で考えたらいい。高太郎はそこを一瞬迷ってしまったのだ。しかし、これがある意味において、彼の人生を大きくかえることとなる。
芝居当日、席が2:2で分かれていることを知り、彼は裏から手を回す。今から思えば、なりふり構わず、といった感じであろうか。そしてまんまと美穂の隣に陣取った彼は、
『あ〜今からしばらく、こんな近距離に・・・芝居に集中できね〜』
と思うわけだが、その彼の思いは、芝居が始まる前に早くも消え去る。
キャラメルボックスには有名な加藤さんの前座があった。それを見たとき、彼は既に意識が舞台上にあった。カーテンコールの拍手が鳴り止むまで、彼は隣に美穂がいたことを忘れた。グッドバイノーチラス。この作品が彼の運命を変えた。
【いつか同じ舞台(世界)で活躍したい】
それからの彼は、純粋に演劇にも熱中した。微妙に不純だった彼の熱意が、本当の意味で純粋になった。
夏といえば、合宿。この演劇部にも強化合宿というなのお遊び合宿があった。浜辺。演劇部らしく、余興は即興芝居やネタ大会。花火に肝試し。夏だ。これこそ夏だ。
そんな中、彼は美穂を呼び出す。その頃はまだ「あいのり」などという番組は無かったが、どう考えてもそういうノリだ。浜辺で話をする二人。その遠く後に高太郎がいた。二人のことが気になって散歩にかこつけて探しに来てたのだ。何を話したのだろうか・・・彼が覚えているのは、満天だった星空と、静かに力強く押し寄せる波の音だけだった。でも確かに彼は告白した。もう既にばれまくりの彼の美穂に対する思いを。なんという返事をもらったかも覚えていない。返事は保留だったと思う。ただ、昼間の暑さとはうってかわって、涼しい夏の夜だった。
合宿から帰り、しばらくして、美穂の親友から、
「美穂の答え、多分○だよ」
と教えてもらう。
彼の短い春が始まった。
次回:vol3 大学1年生 秋〜冬
vol1 大学1年生 春〜夏
2006年6月20日 連載 コメント (1)vol1概要:
彼は無事大学生となり、高校時代にずっと片思いをしていた女性への
淡い恋心に見切りをつけ、新しい恋を見つけたのである。
第一話:その思い、胸に秘め。
彼は第一希望とはいかなかったが、無事に国立大学に合格することが出来た。浪人をして第一希望を目指すことも選択肢の一つであったろうが、それを選ばなかったのには理由があった。彼が高校時代にずっと恋焦がれていた女性が(その女性は彼の大学の隣の県に住んでいたのだが)あと1年で実家に帰ってしまうことを知っていたからだ。え?それだけの理由で?と驚かれる人もいるだろう。でも彼にとって、どの大学に行くかと言うことよりも、その1年で彼女を振り向かせたいと思う気持ちの方が強かったのである。
彼の大学生活は至ってマジメにスタートを切ることとなる。部活は以前から興味があった演劇部を選択した。ここでいきなりではあるが、彼の変人っぷりが発揮される。新入生にもかかわらず、彼が演劇部に入部を決めて、初めに取った行動は、「新入生の勧誘」であった。自ら進んで。理由は単純明快。同じやるなら仲間が多い方がいいと思ったからである。
演劇部、新しい学生生活、バイト・・・彼を取り巻く環境は激しく変化し、しばらく片思いの女性にも会えない日が続いた。演劇部の練習は、特に本番直前は朝から夜中まで続くハードなものであった。もちろん、それに伴い、仲間同士の絆はかなり深まるし、またそこから恋愛などに発展するのも決しておかしな話ではなかった。彼もご多分に漏れず、同期の仲間にほのかに魅かれ始めていた。
そんな忙しい生活の中で、恋焦がれていた女性に会う機会が巡ってくる。
久しぶりに会うその女性(むつみ)、相変わらず無駄にてれる彼。夜中に満点の星を見ながら語り合う男女!なんとロマンチックな・・・
彼はここで彼女、むつみへの思いを断ち切ることを決める。むつみは、仕事・夜間学校・陸上競技の3つを同時に頑張っている彼にとって眩しい存在であった。しかし、彼の思いはむつみに届くことはなかった。そればかりか、忙しい仕事のストレスの中、陸上競技にとってはマイナスにしか働かないタバコをいつの間にか吸っていた彼女に、彼は以前のように眩しさを感じなかった。帰りの電車の中で、一つの青春が終わったことに涙した。
さて話は演劇部に戻る。既に新しい恋心が芽生え始めているわけだが、そんなことはお構い無しに、忙しい日々が続く。しかし彼にとっては、最も無心に頑張れて、充実した日々を送れた時期であった。そしてそんな忙しさの中でも、彼の同期、美穂への思いは着実に募っていくのである。
次回:「vol2 大学1年生 夏」
彼は無事大学生となり、高校時代にずっと片思いをしていた女性への
淡い恋心に見切りをつけ、新しい恋を見つけたのである。
第一話:その思い、胸に秘め。
彼は第一希望とはいかなかったが、無事に国立大学に合格することが出来た。浪人をして第一希望を目指すことも選択肢の一つであったろうが、それを選ばなかったのには理由があった。彼が高校時代にずっと恋焦がれていた女性が(その女性は彼の大学の隣の県に住んでいたのだが)あと1年で実家に帰ってしまうことを知っていたからだ。え?それだけの理由で?と驚かれる人もいるだろう。でも彼にとって、どの大学に行くかと言うことよりも、その1年で彼女を振り向かせたいと思う気持ちの方が強かったのである。
彼の大学生活は至ってマジメにスタートを切ることとなる。部活は以前から興味があった演劇部を選択した。ここでいきなりではあるが、彼の変人っぷりが発揮される。新入生にもかかわらず、彼が演劇部に入部を決めて、初めに取った行動は、「新入生の勧誘」であった。自ら進んで。理由は単純明快。同じやるなら仲間が多い方がいいと思ったからである。
演劇部、新しい学生生活、バイト・・・彼を取り巻く環境は激しく変化し、しばらく片思いの女性にも会えない日が続いた。演劇部の練習は、特に本番直前は朝から夜中まで続くハードなものであった。もちろん、それに伴い、仲間同士の絆はかなり深まるし、またそこから恋愛などに発展するのも決しておかしな話ではなかった。彼もご多分に漏れず、同期の仲間にほのかに魅かれ始めていた。
そんな忙しい生活の中で、恋焦がれていた女性に会う機会が巡ってくる。
久しぶりに会うその女性(むつみ)、相変わらず無駄にてれる彼。夜中に満点の星を見ながら語り合う男女!なんとロマンチックな・・・
彼はここで彼女、むつみへの思いを断ち切ることを決める。むつみは、仕事・夜間学校・陸上競技の3つを同時に頑張っている彼にとって眩しい存在であった。しかし、彼の思いはむつみに届くことはなかった。そればかりか、忙しい仕事のストレスの中、陸上競技にとってはマイナスにしか働かないタバコをいつの間にか吸っていた彼女に、彼は以前のように眩しさを感じなかった。帰りの電車の中で、一つの青春が終わったことに涙した。
さて話は演劇部に戻る。既に新しい恋心が芽生え始めているわけだが、そんなことはお構い無しに、忙しい日々が続く。しかし彼にとっては、最も無心に頑張れて、充実した日々を送れた時期であった。そしてそんな忙しさの中でも、彼の同期、美穂への思いは着実に募っていくのである。
次回:「vol2 大学1年生 夏」